再婚 ページ34
◇◇
杏寿郎が居なくなって、2度目の春。
「千寿郎、2日間家のことは頼みます」
「はい、姉上!
ご実家でゆっくりお休みになってくださいね」
そうにこやかに門まで私を送り出してくれる千寿郎に私も微笑みかけ、迎えに来た自動車に乗り込む。
こんな場所で自動車に乗ると、自然と注目を集めてしまうが、瞼を瞑って少し経てば、見慣れた西洋家屋の家につく。
・
成人式を終えて数ヶ月が過ぎた頃、一度実家に戻ってくるよう私宛に文が送られてきた。
しかし、それを半年以上の間、先延ばしにしていた私は、今こうして強制的に帰省させられている訳だが、どうやらゆっくり休む訳にはいかないらしい。
「いつまでも、
煉獄様にお世話になっている訳にいかないでしょう」
「それについては、
槇寿郎さんと千寿郎としっかりお話をしました」
自分でもずっと考えていた。
槇寿郎さんと千寿郎は、もちろん家族なのだから残ってくれて構わないと仰ってくれた。
その厚意に甘えて問題を見ないようにしてきたが、一宮家にとっては子孫繁栄の大事な機会を逃すことになる。
不妊については、しのぶちゃんと槇寿郎さん以外に話したことは無いため、当然、私の家族も知るはずがない。
「見合い相手は私が探してきました」
夫と死に別れしたことも、年齢を差し引いても、顔だけはいいから貰い手はいくらでもあったと話すお母様に、私は顔を顰める。
「…下品だわ」
「あなたのためよ」
そう目を伏せてそう話すお母様は、見合い相手のお顔を私にみせてくる。
「…お母様、私は絶対に再婚は致しません。
杏寿郎さんから貰ったこの苗字だけは、
どうか私から取り上げないで」
ピタッと頭を机の近くまで下げると、お母様は珍しく驚いたように声を漏らす。
いつまで経ってもかえってこない返事に、私が頭をあげようとした矢先、リビングの扉が勢いよく開かれた。
・
「母上、これを見ていただきたく存じます」
そう言ってズカズカと部屋に踏み入るのは、会いたくて仕方なかった兄達だった。
「…これは?」
兄の手元に目を向ける母を眺めていると、その手には煉獄杏寿郎と書かれた便箋が視界に入る。
一つ前の手紙に書いてあったが、杏寿郎が宝を隠すのをお兄様は手伝ったらしいが、まさか家に2つもあったなんて。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時