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「ん…?」


勝手に着替えてしまおうと、振袖の入っていた箱を開くと、底に材質の違う厚紙が敷いてある。

虫除けにでもなっているのかと、呑気に底から取ってみると、そこには1枚の手紙があった。







「っぁ」



まさかこんな所から出てくると思わず、約1年ぶりの発見に、私の心臓はどくどくと脈を打ち始める。

便箋を裏返せば、彼の字で煉獄杏寿郎と記されており、私は何度もその名前を指でなぞる。

天国から送られてきたとも思えるソレを、私は振袖を着たまま、引き出しに入った挟みで便箋を開いた。







◇◇






Aへ



この手紙は何枚目だろうか。

君のことだから、飽きてしまってはいないか?


この手紙を君が読んでいるということは、俺は既にこの世に居ないのだろう。君の晴れ姿を見られなかったこと、本当に残念に思う。








これを隠す少し前に、君の家族と話をした。


その時、君が大好きだと言っていたお兄さん達には、この宝探しの事情を伝えた。


最初こそ複雑な顔をしていたが、では見つけられない場所に隠そうと、この一宮家に隠すことを提案してくれたのだ。





君のお兄さんは、君に似て、本当に素敵な人達だ。









そして、この手紙を読んでいるであろう

20歳のA。





成人おめでとう。




本当のことを言えば、君がこんな宝探しなどやめて、前向きに生きてくれると嬉しい。


俺の事など忘れてしまって、愛する者と家庭を持って幸せになって欲しい。


昔から頑固な君は、納得いかないと怒るかもしれないが、辞めたくなったらいつでもやめてくれて構わない。







俺は、君の幸せを1番に願う。







◇◇








「…狡い人」



私が途中でやめる訳ないでしょうと、手紙を持つ手に自然と力が入り、紙にシワが寄ってしまう。






「…杏寿郎、杏寿郎…、杏寿郎」



抑えきれなくなった感情を吐き出すように、彼の名を確認するように何度も口に出せば、気持ちが暴走し始める。






あなたに抱きしめられたい。


大きな手で包み込んで欲しい。


あの優しい声で私の名前を呼んで。






「…お願い」




久しぶりに高まる感情に歯止めが聞かず、私は苦しくて部屋の中で蹲る。




…もう、このまま死んでしまえば良いじゃないか。



そんな考えが頭を過る中、私は必死に自分を抑え込み、母が戻る前に取り乱した呼吸を整える。








「…七つなんて、あっという間よ」



そう自分に言い聞かせた。






◇◇

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時

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