責務 ページ26
◇
「せっかくAさんが来てくれたんだから、
僕、稽古なんかよりお話がしたいな!」
「駄目よ時透くん」
隊士の皆さんに挨拶した後、自主練をするよう声をかけた時透くんは、キラキラと目を輝かせて話す。
しかし私は、楽しそうな時透くんとは反対に、静かに返事をする。
あなたは柱なんですから、しっかり皆さんを指導してあげなくてはと、5つも下の相手に厳しい言い方をしてしまうが、いくつ歳が離れていようと彼も柱。
私はいじけたように唇を突き出す時透くんに、本当に表情豊かになったなと感慨深く思いながら、笑みをこぼす。
「あなたのおかげで隊士が強くなる」
そうすれば、何人もの命が救われることになるのよとニッコリ頬を包み込んで言えば、時透くんは目をぱちくりとさせる。
「…やっぱりAさんは変わらないね」
「そうかしら」
そんな会話と同時に、時透くんは仕方ないとばかりに溜息をつき、私に向き直る。
「じゃあ、後でいっぱいお話してね」
そう言ってパタパタと走り出す時透くんは、私の返事を待たずして稽古場に戻ってしまった。
・
「煉獄様」
時透くんが居なくなってすぐ、後ろから名前を呼ばれて振り返れば、隠の方が現れる。
「そろそろ始めようと思うのですが」
「はい、お手伝いしますね」
そう返事をして腕を捲ると、私は時透くんの御屋敷の中に案内された。
◇
「皆さん、お疲れ様でした」
お昼時。
裏で隠の方たちと、おにぎりを作っていた私は、昼休憩になった瞬間に、その場で倒れ出す隊士の元を回る。
「時透くん、沢山食べるようになったわね」
「そうかなぁ?」
私の桶に入っていたおにぎりは、ほとんどが時透くんによって消化され、美味しい美味しいと食べてくれたため、私はホッと胸を撫で下ろす。
「Aさんはさ、煉獄さんが死んで辛くないの?」
隣に腰掛けた時透くんが、突然そんな話を振ってきたたせいか、私は少し喉の奥が詰まるのを感じた。
・
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時