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店の奥には住まいが広がっており、中へ招き入れられた私たちが腰掛けていると、お茶を出してくれた店主の奥さんは懐かしそうに目を細める。









「あなた、小さい頃

杏寿郎さんと一緒に買いに来てくれた子よね?」


「…よく覚えていますね」



その奥さんの言葉に首を傾げていると、奥さんはふふっと楽しそうに笑いをこぼす。






「何年前だったかしら…



小さい2人組の男の子がね、

女の子に櫛を送ると言ってうちの店に来たの」



随分珍しい客層だったから、よく覚えているわと笑う奥さんに、小芭内は罰が悪そうに顔を背ける。



珍しいというのは、櫛の贈り物は男女間で婚約の意味として用いられることが多く、友人間で櫛を送ることは、苦しい、死など悪いことを連想させる。





そのようなことから珍しいと思ったのだろうが、貰った時は嬉しくて、私にとって贈り物の意味なんてどうでもよかった。



小芭内が蜜璃ちゃんにぞっこんなことを知っていたため、先程はとうとう2人がお付き合いをし始めたのだと気分が上がって忘れてしまっていたが、あの頃の私にとって、2人から貰った初めてのプレゼントは、本当に宝物だった。









「それで、

どんな子にあげるのかなって気になっちゃって」



それで2人に聞いてみたら、友達の女の子が自分で髪を肩上まで切ったなんて言うから、もっと驚いたのよなんて奥さんは笑った。









「杏寿郎さんにはたくさんお世話になったわ」



鬼に襲われた時に命を救って貰っただけじゃなくて、小さなことから大きなことまで…


そう涙目で話す奥さんは、恐らく私がここに来た理由を悟ったのだろう。








「どうぞ」



私が微笑みながら懐からハンカチを出せば、奥さんは小さくお礼を言って目に当てる。






死んでもなお、色々な人から慕われる彼は本当に素晴らしい人間だ。









心がポカポカと暖かくなるのを感じながら、そんなことを考えていると、自然と口角が上がる。









「営業後なら、

いくらでも店の中を探していいから」




そう話す奥さんは杏寿郎が少し前に、「宝」を隠しに来たことを私たちに伝え、力強く私を抱きしめた。



















癖→←櫛



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時

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