櫛 ページ17
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「この宝探しは
言わば、杏寿郎さんが私をこの世に留めておきたいがためにやっているモノです。」
杏寿郎が死んだら、私はすかさずに後を追うつもりだった。
でも、あなたが私に生きて欲しいと言ったから。
「…手伝うのを辞めますか？」
全てを見つけたら死ぬつもりだと説明した上で、小芭内にそう意地悪く聞けば、フンと鼻で笑われる。
「今更何を言っている」
そう言って勝手に歩き始めてしまう小芭内に、私は相変わらず不器用な人だなぁと笑みを零した。
◇
「…何か心当たりは無いのか」
一旦街に出てみた私たちは、杏寿郎と良く通った店を回ってみようということなったのだが、痺れを切らしたように小芭内が呟く。
数件当たってみても見つかる気配のない「宝」は、店主や仲のいい常連さんに探り入れてみても、何も出てこず、私たちは行き詰まってしまったのだ。
「隠した…というより、
店先なら人に預けたという線の方がありそうですが」
そう私が話していると、小芭内がふとある店の前で歩みを止める。
「…櫛ですか？」
横から覗くように商品を見ると、様々な形の櫛たちが綺麗に並べられている。
「蜜璃ちゃんへの贈り物ですか？」
「…貴様、覚えてないとは言わせないぞ」
店の中を見回し始める小芭内に、少し揶揄うように笑えば、ジトッと睨み返される。
「…？」
首を傾げる私に対して、小芭内がさらに眼光を光らせる。
「俺と煉獄が昔、お前に贈ってやっただろう」
◇
「どれも素敵ですね」
「そうかいそうかい！
姉ちゃん別嬪だから、まけるよ！」
そうにこやかに笑う店主に、私も笑顔で返す。
「お聞きしたいことがあるのですけど、
何か預かり物をしておりませんか？」
「ん？預かり物なんて」
そう言いかけた店主は、私の顔をじっと見て、…あ！もしかしてアンタ、あの兄ちゃんの！と、大きな声を上げる。
驚いたように私を指さす店主に戸惑っていると、横から出てきた女性が、コラッと店主の指を叩き落とす。
「店主の妻でございます。
こちらへどうぞ、煉獄様」
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年10月28日 20時
