旧友 ページ16
◇◇
「貴様、つまらん死に方だけはするなよ」
「ちょっと伊黒様。
言葉遣いに気をつけてください」
女性に対して貴様なんてやめてくださいとキツく笑いかければ、お前のことを女だと思ったことは無いとハッキリ言われてしまう。
彼とは古くからの友人であり、私が11くらいの時に煉獄家で会った。
槇寿郎さんがいきなり連れてきたと杏寿郎は話していたが、彼もまた、鬼による被害者らしい。
「16あたりには少し落ち着いたようだが、
俺は最初、お前のことを男だと思っていた」
「それは初耳です」
確かに破天荒であったことは認めるし、小芭内と初めてあった頃はちょうど反抗期真っ盛り。
家の決まりに痺れを切らし、自ら髪を切ってしまった時だった。
「今日はお前の宝探しとやらに付き合ってやる」
くだらんなんて言いながらも、先を歩く小芭内に私は少し笑ってしまう。
小芭内とは杏寿郎の葬儀の時に1度顔を合わせたが、その時にあまりにも心配そうに私を見るので、杏寿郎の隠したものを探すと、宝探しについて話してしまった。
「家の中は探したのか」
「はい、くまなく」
恐らく、1つ目同様、地面に埋められた可能性が高いですねなんてヘラヘラ笑いかければ、完全に無視される。
「全部でいくつだ」
隣を歩いていると、唐突にそう聞いてきた小芭内に約束したのは10個であることを伝えれば、ぴたっと足を止める。
「…全て見つけたら、お前はどうする」
昔は私の方が体が大きかったのに、今ではもう全くと言っていい程体格が違う。
あの柱になってしまうまで鍛えたのだから当たり前なのだけれどと、そんなことを考えながら、私は小芭内の綺麗な瞳を眺め続ける。
「…この世界は、私一人で生きるには寒すぎる」
もちろん、小芭内も千寿郎も、槇寿郎さんだっているけれど、私に杏寿郎の居ない世界を生き抜くなんてできない。
夜、2人で眠るために用意した少し大きめの布団も、一人で寝るには広くて余計に寒くて寂しさを感じる。
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年10月28日 20時
