壱 ページ15
◇◇
君なら、1番最初にこれを見つけると思っているのだが、あっているだろうか。
この桜の木が好きだという君のためにも、どうしてもここに隠したくて、雨などで溶けてしまわぬよう、色々と試行錯誤したんだ。
そして、ここは君と初めて出会った、俺にとって大切な思い出の場所だ。
昔、見合いを抜け出して来てしまうほど、お転婆だった君は、今では立派な大人の女性になっていて、誰もが見惚れてしまうほど綺麗になった。
君に沢山伝えたいはあるが、あまり湿気た話は嫌いだろう?
今回の手紙はここらで終いにする。
短いと思うが、あと9個もあるんだ。
残りも君が見つけられないよう隠すつもりだが、焦らず、ゆっくり探しておいで。
◇◇
そんな手紙を読んで、私は自分の部屋で蹲る。
炭治郎くん達とはその場で別れ、手紙は一人で読んで下さいと気を使ってくれたため、心置き無く感情を表に出せる訳だが、私一人で抱えるには重すぎる。
「会いたいよ…杏寿郎」
早く、あなたの元に行きたい。
◇
「Aさんってさ、煉獄さんの音と似てるんだ」
Aさんと別れた後、3人で蝶屋敷に帰っている最中に、善逸が突然話し出す。
「強くて、優しい音がする」
「…あぁ」
俺も初めてAさんに会った時、同じようなことを思ったなと、善逸の言葉に強く頷いた。
「音とか訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!
そんなことより、なんでアイツは泣かねぇんだ!!」
その伊之助の言葉に、俺はハッとする。
ニコニコ気色悪い顔しやがってと、口の悪い伊之助を注意するが、伊之助の言う通り、煉獄さんの話をした時も、さっき手紙を見つけた時も、Aさんは一切泣いていない。
いや、煉獄さんの残した手紙を見た途端、俺たちが泣き出してしまったせいで泣けなかったのかもしれないが…
「…我慢、してるんだろうなぁ」
「ハァン!?なんで我慢する必要があんだよ!!」
そう呟く善逸に、なぜか怒り始める伊之助を抑えつつ、俺はAさんのことを考える。
俺たちより、Aさんの方が辛いはずなのに、Aさんはワンワンと声を上げて泣く俺たちを、ずっと笑顔で励ましてくれた。
そして、家では千寿郎くんのために、泣かないのだとしたら。
「誰か、
Aさんの心の支えとなる人がいないだろうか」
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時