蝶屋敷 ページ11
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「会えて嬉しいわ、しのぶちゃん」
「えぇ、私もです」
本当に久しぶりに会うため、嬉しくて私も自然と笑顔になる。
そんな私たちが見てか、炭治郎くんは早々に部屋を退室し、カナヲというしのぶちゃんの継子がお茶を出してくれた。
◇
「…薬の副作用の方はどうでしたか?」
「全く問題なかったですよ」
たくさん近況を話終えたあと、そう悲しそうに聞いてくるしのぶちゃんに、私はいつも通り笑って返す。
薬…というのは、私の不妊治療のためのモノ。
結婚して杏寿郎と何度かの房事を終えた後、いつまで経っても妊娠の症状が出ず、子が出来なかったため、私はしのぶちゃんの元で診察を受けていたのだ。
そして定期的に体を見てもらっているうちに、私たちは親しい関係になった。
「ねぇ、しのぶちゃん」
目を伏せるしのぶちゃんに、私はゆっくり話しかける。
「しのぶちゃんも、体には気をつけてね」
「へ、」
言っていいのか迷ったが、私は言わずには居られなかった。
出会った当初は口紅など塗っていなかったのに、日に日に濃さを増す赤。
杏寿郎から聞いた話によれば、しのぶちゃんは上弦の鬼に姉を殺されている。
「…口紅の色、もう少し濃くしないと」
そんな毒を操る彼女が、強い鬼に対してどんな戦いをするかなど容易く想像できる。
蝶屋敷の子達にバレてしまうわよと、私は鞄の中から口紅を取り出して、トントンしのぶちゃんの唇に色を載せてあげれば、驚いたように目を見開いて固まっている。
「…そんなに分かりやすかったでしょうか」
「いえ、完璧でした」
そう答える私に、じゃあなんで…とばかりに凝視してくるしのぶちゃんに、思わず笑ってしまう。
「だって、友達だもの」
そう言って微笑み、しのぶちゃんに私の口紅を握らせると、いただけませんと断られてしまう。
「私のお古で悪いけれど、
しのぶちゃんに持っていて欲しい」
これ結構良いお店のなのよと、冗談っぽく笑って、ユラユラと瞳を揺らすしのぶちゃんをそっと抱き締める。
「しのぶちゃんは強い」
あなたならきっと大丈夫よ。
そう背中を叩いてあげると、しのぶちゃんは小さな声で、ありがとうと呟いた。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時