インセクトシンドローム ページ26
「店長すいません。
ちょっと休暇を取ってもいいですか?」
電話の向こうから店長が言った。
「どうしたの? 何かあった?」
と、心配そうに言う。
それが社交辞令か、本心からかは分からなかったが、
人のいい店長のことだ。
きっと本心からだろう。
「ちょっと具合が悪くて……
1週間くらい休ませてもらえませんか?」
1拍置いて店長から返事がきた。
「そう……お大事にね。
具合が良くなるまで休んでていいから。」
「ありがとうございます」
と、電話を切った。
具合が良くなるまでには数年かかるだろうが。
────いや、そうなるともう手遅れだ。
インセクトシンドローム。昆虫になる病。
治す方法は、ない。
太陽の光を浴びないことで、進行を遅らせることが出来る。
都合の良い事に、私は一人暮らしだ。
両親に気づかれることはないだろう。
外食は、太陽の光を浴びる可能性がある。
夜のうちに材料を買って自炊だ。
でも。どうせ昆虫になることは変わりない。
それならこんな面倒な事をする理由は無い。
押し入れにロープがあった。
なんであったのかは知らないが、好都合だ。
「……綺麗には死ねないな」
『最期に電話したのに。
その時に優香ちゃんはSOSを出していたのかもしれないですね。
何で気づいてあげられ……』
悲痛そうに話す女性。
それを少女はぼうっと見つめていた。
そこでくるりと振り返り、
「可哀想に……
虫の生活もなかなかいいものだと思ったのですけどね」
と、抑揚のない声で言った。
「ねえ博士。博士はなんの虫になりたいです?」
なんで少女はこんなに呑気にいられるのだろうか。
自分の身に、起こったことを知らないからだろうか。
「博士。まただんまりですか?」
と、少女は頬をふくらませた。
私も黙りたくて、黙っている訳では無いのだがな。
大人の事情ってやつだ。
END
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兎危@ゆっ家族 - わぁぁあ、私が提案したのが載ってる...(当たり前?)読み方はあってますよ!皆さん読み方を付けてコメントしていたので間違ってはいないと思います! (2018年5月10日 17時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
空百合@募集企画運営のため低浮上(プロフ) - やっぱり何回読んでもめっちゃ面白い(´;ω;`)私には書けないなぁ…… (2018年5月4日 4時) (レス) id: 3dba0349b8 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 綺夜音さん» ありがとうございます! (2018年3月28日 9時) (レス) id: 46c09611b4 (このIDを非表示/違反報告)
綺夜音(プロフ) - 面白過ぎて、恐縮しましたよ!一気読みしちゃいました!!面白いので、更新楽しみにしています。 (2018年3月26日 19時) (レス) id: 8bca99ae07 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます! (2018年3月15日 20時) (レス) id: 46c09611b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みき | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月12日 20時