奇病患い 【短編集】

ライアーシンドローム ページ15

＿＿＿

嘘をつく度に体のどこかに『×』の形をした痣が浮かび上がる病。

痣の大きさには個人差があり、ついた嘘の壮大さに比例するとも言われている。


『他人を嘘で陥れるようなことをした』人や『他人に嘘をつき、それを信じる様子を見て嘲った』人のみ稀に発病する。

正直に生きれば痣は増えないが、一度浮かび上がった痣が消えることはない。


発病後、あまりにも嘘をつき続けると胸元に一際大きく『×』の痣が浮かび上がり、心肺停止で息絶えてしまう。

＿＿＿

「優香ちゃんって、裏表ないよね」

少女が笑った。

「そうかな。ありがとう！」

×

と、私は笑って見せた。
内心、少女のことを嘲りながら。

私は嘘吐き。
息をするように嘘を吐けるのは、
一種の才能といってもいいだろう。

どんな時でも、ニコニコ笑って、
人の悪口などを言わない。
そんな人を、私はずっと演じ続けている。

そんな私を、正直だの裏表がないだの。
本当に馬鹿みたい。

最初は心が傷んだが、
もうそんなことは無い。

「そう言えば、昨日クッキー作ったんだー。
蒼葉ちゃんにあげるね！」

×

これも嘘。
まあクッキーがあることは本当だけど、
お母さんが作ったもの。

「いいの！ありがとう」

人間を〇と×で分けるなら、
私は絶対×。

「蒼葉ちゃんだけ特別だよ！」

×

……嘘を吐いて、人を騙して。
私は一体何がしたい？
そう自問自答しても、何も返ってこない。

私はそんな自分が大嫌い。

××××××

バツばっかりの自分。
だからこうなった事を、恨む事は無いし、
罪をしっかり受け止めよう。
ここで、辞めるのは、ただの意気地無しだし、
今反省しても、もう遅い。
そうでしょう？

だから最期まで、
私は私であり続けよう。

『嘘吐き』

それ以外に私を表現出来るものは無いから。

......................................................
昨日更新出来なくてすいませんでした
諸事情がありまして……
なので今日2つ更新します！

すいません非公開にしてました

ライアーシンドローム→←死期眼病

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す