小さな約束 (ページ2)

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・ - s h i n j i r o -

あと少し。

TSの特典の握手会。

その長い列は、あと少しで終わる。

「ありがとう～」

また、１人終わった。

次の人が来た。

明るい茶色の髪の毛。

ストレートでサラサラ。

くるぶしより少し上くらいの真っ白な長いワンピースに麦わら帽子。

彼女だけ、何かが違った。

パッと手を出して、彼女と握手をする。

そしたら

彼女はちょっと困ったような笑顔で言った。

「結婚しよって約束したの、覚えてる？」

息が止まるかと思った。

まだ幼かったあの日。

確かそんな約束をした女の子がいた。

東京に出てからも忘れたかったのに忘れられなかった人がいた。

びっくりしすぎて、なにも言えなかった。

「覚えてないよねっ！」

気づいたら、そういって笑って、彼女は去って行った。

まだなにも整理できていないのに、瞬く間に次の人が来る。

「いつも応援してますっっ！大好きですっ！」

そんなこと言われても、上の空だった。

そう。

俺は約束したんだ。

恥ずかしさを堪えて、初恋の女の子に言った。

『大きくなったら結婚しよう！』

「さっきの子は！？」

無意識のうちに叫んでいた。

ファンの子達がいなくなって、スタッフだけになった会場に俺の声が響き渡る。

ス「さっきの子…？」

「髪長くて白のワンピース着た子！…あぁもうっっ！」

走って裏口から会場を出た。

ねぇ。

俺も、覚えてるよ。