陽射しや陽射し、 いがさく ページ18
熱中症嘔吐
「お前バカかよ」
バカなんて猪狩には珍しいストレートな物言いに彼も焦っているのだと気づいて思わず笑ってしまう。
「は？なんで笑ってんの」
棘を含んでいる言葉の割にその語尾は不安そうに揺れていて恐る恐るといった調子で背中を動く手のひらはあたたかい。
作間は目を伏せて地面広がる惨状を改めて見た。
体は熱く、がんがんとした頭痛はまだ作間を苦しめているが、呼吸さえ困難になるような吐気はもう治まっていた。
痛む頭の芯はやけに冷えていて、やばいな、とこれまた妙に冷静に状況を俯瞰している。
始まりはほんの少しの寝不足だった。
それに加えて梅雨前の出力がおかしい暑さ。
太平洋高気圧、と作間は口に出してみる。
中学生の頃に習った理科の知識は暑さの理由になりはすれども、緩和などしてくれるはずもない。
まだ春のうららかさを引きずる身体に殴りかかるような日差しにため息を一つ。
梅雨の気配もだいぶ濃い湿度の高い暑さは作間の体調を可笑しくするのには十分すぎた。
今日の予定は事務所近郊を歩き回ってリアル宝探しをするYouTubeの企画のみ。
作間はまた空を睨んだ。人の気持ちも知らずに真っ青な空。少しでも日が陰ってくれればいいのに。
撮影は瑞稀が勘の良さであっさりとクリアしてくれたおかげで少し巻き気味に終わった。
作間は助かった、と密かに思う。
「いやーこんな運で行かれると悔しくもないっすよねぇ」
頭が痛くて仕方なかった。
歩けばその振動ががつんがつんと脳を揺らし吐き気を誘発する。
「瑞稀クリア」と示されたスマホの液晶の光も
都会の白く塗られた壁に反射する陽光も、
途切れない人の流れも
話し声も
車の排気ガスも、
もう全部が作間に牙を剥いていた。
ダラダラと止まらなかった汗は瑞稀がクリアしたことに安堵して、だいぶおさまった。
猪狩からメッセージが来て、彼がかなり近くにいることを知る。
「じゃあ猪狩さんと合流して事務所に戻りましょう」
作間についていたスタッフ兼カメラマンからの指示に頷いた。先ほどから汗を拭けと指示を出させてばっかりで申し訳ない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪音（ゆのん）(プロフ) - なので、きょもほくの「うつくしいひと」のきょも視点をお願いします。 (1月29日 12時) (
レス) id: c18d06783b (このIDを非表示/違反報告)
雪音（ゆのん）(プロフ) - あと、久々にリクエストなんですが、きょもほくの「うつくしいひと」という話を読んでいて、その話のきょも視点が読みたくなりました。 (1月29日 12時) (レス) id: c18d06783b (このIDを非表示/違反報告)
雪音（ゆのん）(プロフ) - こんにちは！お返事ありがとうございます。わかりました！楽しみに待ってます(^o^) (1月29日 12時) (レス) @page3 id: c18d06783b (このIDを非表示/違反報告)
2020(プロフ) - 雪音（ゆのん）さん» お久しぶりです！にのふま、時間ができたら修正してアップします (1月28日 22時) (レス) id: 5073d9421b (このIDを非表示/違反報告)
雪音（ゆのん）(プロフ) - こんばんは！あれ？にのふまの話、消えてる？ (11月3日 17時) (レス) id: c18d06783b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：2020 | 作成日時：2021年4月27日 16時
