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「どうしたん〜A〜」
「…っ」
オートロックを解除して、彼がにやにや、と笑みを浮かべながら部屋に入ってくる。クッションを抱きしめて、ベッドの上で女の子座りをして彼を待っていた。こんな事をする達じゃないのだけれど。ゾムがベッドの上に座る。
「どうしたん、突然そんな事言って。」
「…ごめん、」
「怒ってるわけやないよ、ただ…珍しいなぁ思って。」
「…なんか、」
「ん?」
「…こわ、かった。」
たまには私から甘えたって許されるだろう。
クッションを放り投げて、ゾムの胸元へダイブした。突然の事に、フリーズしていたゾムだが、そっと背中に手を回してくれた。それだけで安心感が強くて、もう何かわからなくなって、体のまま身を任せた。
「怖かってんな、独りで怖かったな。」
「っ、ふ、ぅ、」
「もう俺いるから大丈夫やで、安心し。」
「ぞむ、ぞむ、ひとりにしないで、」
「しぃひんしぃひん。そりゃあ、あのダークホースに弄ばれてんもんなぁ、分からんよなぁ。」
あぁこの匂い、安心する。
自然に背中に手が回る。感じた事の無いような安心感と幸福感にずっと包まれたくなって、力が入る。こんなに他人を求めたことは無かったのに、恋人でもないのに恋人らしい事をしてる。罪悪感を感じる暇すら与えてくれない。彼も手を回す力を強くしてくれた。
「…Aも甘えるねんなぁ。」
「…煩い。」
「ええやん、可愛いで?」
「…恋人でもないのに。」
「俺は好きやもんね。Aにその気があったらすぐ付き合えるもん。」
「…。」
このくすぐったい感情はなんだろうか。
彼によって引き出される、心がくすぐられる、でもほんのり温かいこの心。
コール音。でもそれは私のでは無い。ぱ、と手を離すも、彼は私を抱きしめたまま電話に出た。
「おん…ん?今から?あぁ…連れてきたらええの?りょーかい。」
頭を撫でながら対応する彼が、電話を切ると、ふ、と私を抱えて立たせた。頭にはてなマーク。そして彼の緑のパーカーを被せられた。大きい。ずり落ちるフード。片目で彼を見た。
「それで外出れる?」
「あ…うん、一応…。」
「よし。ほな、行こか。」
「えっ、ちょ、どこに。」
彼の手が優しくダボダボになった手首を握る。そのまま外に私を連れて行く彼に問うた。すると彼は先程の優しい顔で、でも少し決意を固めた顔で、私の両手をとった。
「Aに話があんねん。ーーーこれからの運命を決める、大切な話が。」
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しらたま。(プロフ) - 信者さん» 貧血には注意してくださいね、ありがとうございます! (2017年10月31日 21時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
信者 - 続編おめでとうございます!楽しみにしてました!教授のあまりのかっこよさに血吐きました。これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月29日 20時) (レス) id: d26dcbfb3b (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» ありがとうございます! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2017年10月29日 10時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
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