＊ ページ22
｢…繋がらない…｣
仕事用の携帯の発信履歴が彼の名前で埋まっていく。そして手元には運び屋依頼リスト。走り書きの筆記体で書かれた何ヶ条の項目の一番下。それには何重もの下線が引かれていた。
｢…せっかくいい仕事を紹介してやろうと思ったのに…一生の貸しとか言われたら殺すわよ…｣
ため息とともに、ドライバー室の椅子にぼすり、と座る。天井を仰ぐようにしてら上を見つめる。
｢…あと、もう少しなんだよ…何かが、引っ掛かって…繋がらないんだ…。｣
パーティーで聞いた同業者の話。
あれを元に自身で考察を立てるも、何となく繋がらない。何が引っ掛かってるのかすら、理解ができない、頭がオーバーヒートして、それ以上の熟考を許さない。まるでパスワードが掛かっているかのように。
｢…甘い物、それで1回リセット。それがいい。全て忘れてもう一回考えよう！｣
まるでミュージカルの主演女優のように勢いよく席を立つ。財布を片手に持つとベストのシワを伸ばす。そして勢いよく扉を開ける。
｢コンビにぃっ！！？な、なんですかドッキリですかやめてくださいよ死ぬかと！！！！｣
｢あ、いや、驚かすつもりはなかったんですわ。すまんすまん。｣
｢ナイスリアクションすぎやろ。｣
｢A…凄いご機嫌だね…｣
私が扉を思いっきり引いて、謎の鼻歌を口ずさみながら扉を開けると目の前には金髪に朱色の双眼。思わずびくり、と体が反応した。いや、こんな狭い部屋に全員がいる。とりあえず話をしたいそうで、部屋を招き入れた。
｢すみません、コーヒー、さっき飲み切ったばかりでドリップ中なんです…｣
｢気にせんでええよそんなん！俺らが突然押し掛けたようなもんやし！｣
｢はぁ…それで、ご要件は…？｣
それを言うと、突然空気が冷たくなった。まるで品定めでもされているかのように。ごくり、と生唾を飲まざるを得なかった。そして机に放り投げられたひとつの手帳。それに見覚えがあった。思わず手を伸ばして受け取ってしまった。
｢ーーーこれ…｣
｢キリザキ、この名前に覚えはないか？｣
｢キリザキ…キリザキ、ヤマト、ですよね…？｣
｢せや…どういう関係や？｣
手帳を見つめる。レザーのカバーには少し血が染み付いていた。それを指で撫でる。…なにか、託された…そうとしか思えなかった。
｢…キリザキは…命の恩人です…フランスにいた時に…助けてくれたんです…｣
ーーー但し、嘘は付け、そう言われているような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま。(プロフ) - 信者さん» 貧血には注意してくださいね、ありがとうございます！ (2017年10月31日 21時) (
レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
信者 - 続編おめでとうございます！楽しみにしてました！教授のあまりのかっこよさに血吐きました。これからも更新楽しみにしてます！ (2017年10月29日 20時) (レス) id: d26dcbfb3b (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» ありがとうございます！ (2017年10月29日 15時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 続編おめでとうございます！！ (2017年10月29日 10時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
