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「…おや、新しい子が入ったのですか?」
「あぁ、専属ドライバーとして来たんだ。シノダ、紹介しよう、こいつはーーー」
「グルッペン、大丈夫ですよ。」
そう言うと彼は、私に向けてみせる優しい笑顔でこちらに歩み寄ってくる。後ろの事務課の女子はキャーキャー叫んでる。
それが私には、恐怖でしかなかった。
「…エーミールです。よろしくお願いしますね、シノダA。」
「…よ、ろしく…おねがい、しま、す…。」
「どうしたんシノダ、緊張してるん?」
「はは、それはそうでしょうね…ところで…
・
・
見ない間に少し贅肉が付いたのでは?現役の時の方が細かったじゃありませんか。」
ピシリ、と空気が凍りついた。
私の脇腹には、ベストの下に手をやり、私の贅肉を摘むエーミールの手。いや、そんなに付いてないが、確かに4年前よりかは少しーーーって違う!!
「…え?何?知り合いやったん?」
「えぇまぁ、イギリスの時に少し。ねぇAさん?」
「…どこまで行ってもデリカシーのない男ね。」
「くく、事実を言ったまでですよ。ねぇ?A。」
・
・
「…くたばれ、エーミール。」
それだけ吐き捨てると、私は女子の群れを掻き分けてドライバー室という名の私の城に戻った。
嫌な予感というのはいつも当たるものだ。冷や汗が止まらない。あの頃の私を恨んでやりたい。どうしてこの事を予測できなかった?確かに私はあの組織に入ったのは特例であって、本来なら最低条件である21歳の時に辞めてしまった…なのに、どうして、とりあえず、コーヒーでも飲んで、落ち着いーーー
「…動揺し過ぎですよ、A。」
「っ!!」
「あぁ、コーヒーを無駄にしてしまって。」
何故来た。
マグカップに入れようとしたポットは狙いを定めきれないまま手にバシャリ、とかかった。部屋の入口には彼がいた。段々歩み寄ってくる彼に、後ずさりしか出来ない。壁に追い詰められた時、私の顎をくい、と持ち上げた彼は満更でもない笑みを浮かべていた。
「ぁ…」
「まーた付き合ってもないのに関係作ってるんですか?それにしては複数の、気配はないですね…。」
「な、に。」
「そんなに怯えないでくださいよ。確かに私が来た時、成人を迎えてましたもんね。ふふ、随分大人らしくなって…。」
「っや…」
「まぁ、ここじゃなく所でゆっくりお話しましょう?あの組織の事について、しっかり教えてあげますから…。」
そう言って私にカードを差し出すと、頬にひとつキスを落として部屋を去っていった。
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しらたま。(プロフ) - 信者さん» 貧血には注意してくださいね、ありがとうございます! (2017年10月31日 21時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
信者 - 続編おめでとうございます!楽しみにしてました!教授のあまりのかっこよさに血吐きました。これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月29日 20時) (レス) id: d26dcbfb3b (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» ありがとうございます! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2017年10月29日 10時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
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