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「…帰りたい。」
ぼそり、と呟いた言葉は誰にも届くことは無く喧騒に消えていった。ふぅ、と息を吐いた。この息苦しい空間がいつまで続くのやら。
先程から視線が気になる。だからこうやって端の方に逃げてきたのだが、突き刺さる程の視線が気になって気になって仕方がない。あぁ、誰か来てほしい。
「A様、でいらっしゃいますか?」
「!?は、はい…」
「失礼しました、あちらのお客様からです。」
そう言って渡された度数が高めのお酒。ウェイターが指した先のバーカウンターに座る、スタイリッシュな男。傍から見ればナルシスト。ふむ、面倒くさそうだ。
「…頂くだけいただきます。」
「そうお伝えしておきます。」
「これ、チップ。ありがとうね。」
「いえ…!」
全く、チップぐらい出せないのか。ああいう自信たっぷりな男は嫌いだ。もらった酒を飲む、っく、かなりきつい奴じゃないか。しかし私は耐性はある。舐めてもらっちゃあ困る。
「やぁこれはお嬢さん、綺麗すぎて人形かと思いましたよ。」
「んぐ!…は、はぁ…どうも…」
自ら来たぞこいつ。
照れ隠しだとでと思ったのだろうか、危うく酒が気管に流れるところだった。あぁ、こういうの嫌いだ。雰囲気が嫌い。今すぐ逃げたい。しかしここはホールの端だ、逃げ場がない。はぁ、適当に撒くか。
「おっと、これは失礼。あなたのお名前は?」
「…まず貴方から名乗るのがマナーでは?」
「あぁ、それはそうでしたね、僕は亀山 龍と言います。お嬢さんは?」
「…シノダですわ。」
「シノダさんか、日本人?」
「…少しだけ、」
「でも日本人と外国人、どちらもいい所を兼ね備えている。貴方みたいに美しい人は見た事がない!」
「…私、その言葉嫌いですの、"外国人"って。あなたは何様でいらっしゃいますの?私から見ればあなたも"外国人"ですわ。」
「お、おや…それは失礼…。」
これで消え失せるかと思えばしつこく付きまとう。あぁ!こんな最悪なパーティーが今までにあっただろうか!!
「お嬢さん、どこか2人でお話しません?」
「いいえ、そんな気分じゃありませんから。」
「取り敢えずこちらに来ればその気になりますって、ほら!」
「っちょ…」
ぐっ、と離さんばかりに手首を掴んで、ぐいぐいと引っ張られる。痛い、他の人の目に気付かない彼はこれを照れ隠しとまだ捉えてるのか…もう諦めるか、そう思ったその時。
「…!」
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しらたま。(プロフ) - 信者さん» 貧血には注意してくださいね、ありがとうございます! (2017年10月31日 21時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
信者 - 続編おめでとうございます!楽しみにしてました!教授のあまりのかっこよさに血吐きました。これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月29日 20時) (レス) id: d26dcbfb3b (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» ありがとうございます! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2017年10月29日 10時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
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