S.1:蝶の部屋 ページ1
S.1:蝶の部屋
そのコール音は、私の意識を覚醒させるには十分だった。
ぼんやりした意識の中、掛け布団から片手を這い出して、机の上を探る。まだ朝方だ、起きる時間まで2時間ある。依頼人がこの時間に電話してくるのは異例だ…誰であろうか、今の時間からじゃ無理だからねゾム。そんな呟きを吐きつつ、相手を見ると、違う意味で溜息が出た。
｢…私はもう戻れないよ、ミリィー。｣
携帯を置いてあったデスクに放り投げると、そのデスクを背にして目を瞑った。その後の数秒の沈黙の後、ぴー、と甲高い音が鳴った。
もう戻れない。なのになんで彼女は時々留守電を残していくのだろうか。あぁ、知らないんだ。私が"こちら側"に堕ちた事を。彼女の声が再生された時、私はやっと意識を手放せた。
《ーーーもしもしA？ミリィーよ。元気にしてる？もし良ければだけど…A、戻ってきて欲しいの。皆あなたを必要としてる。それが…貴女が私達を裏切る事になっても…。》
▽▲▽▲
ふんふん、と鼻歌を歌いながらミニチュアカーを一つずつ丁寧に拭いていく。ピカピカになったベンツを満足げに見つめると、机の上に角度を揃えて並べた。私の車への愛着といえばそれはもう凄いだろう。今度スポーツバイクを購入予定。今のバイクはもう生産終了してるからなぁ…。
｢…戻ってきて、か。｣
ミニチュアのアルファードを拭く手を止めた。コーヒーの香りが鼻を掠める。いつも並べている棚の奥に隠してた私の前の職場のカードキー。侵入予定は一切ない。なんだか切なくなる。
｢ーーー正義はもろいんだ。正義に紛れた悪はそれっぽく見えないんだから…。｣
私が辞める一年前、新人がやってきたのだがそいつは頭脳明瞭で読書が好き。まるで紳士のような振る舞いで、メンバーの心を掴んでいったが、私はどうも突っかかっていた。
悪側の人間が、正義側にいた。
それが私を、ダークサイドに落とした原因と言えよう。
奴は私の本職を知っている。そして私はあの時、彼の正体を知ってしまった。今あってしまったら私は次、彼の言いなりだろう。彼が私の言いなりだったように。
｢ーーーどうか正夢になりませんように。｣
なんだか嫌な予感がして、アルファードを磨き始めた。
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しらたま。(プロフ) - 信者さん» 貧血には注意してくださいね、ありがとうございます！ (2017年10月31日 21時) (
レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
信者 - 続編おめでとうございます！楽しみにしてました！教授のあまりのかっこよさに血吐きました。これからも更新楽しみにしてます！ (2017年10月29日 20時) (レス) id: d26dcbfb3b (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - チェリー☆拓郎さん» ありがとうございます！ (2017年10月29日 15時) (レス) id: 626c66f5a9 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー☆拓郎(プロフ) - 続編おめでとうございます！！ (2017年10月29日 10時) (レス) id: ad3a02f993 (このIDを非表示/違反報告)
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