[wrwrd!] Hard aport !!! ~Ⅱ~[実況者] (ページ1)

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穏やかな執務室。
しばらくの間陸に足をつける機会が多くなり、慣れてきた今日この頃。ペンを置いて、眺めた窓の外の王都は今日も賑わっている。冬、少しずつ暖かくなってきたとはいえ、まだ身震いのする寒さが続く。

「……、」

こきゅり、とココアを喉に流す。ほわり、と滲み出す甘さと温かさが心にじんわりとしみる。束の間の幸福。湯気がふわり、と香りも含ませて漂う。

「……はぁ、」

ーーーだがしかし、何故かその後の渇きが酷い。
物足りなさが酷く広がって、ココアの甘さすらかき消してしまう。……勿論、ココアの味に何も問題は無い。空になったマグカップを持って、厨房に向かうため、扉を開けた。

「こんにちはA様」
「あぁ……その格好、冷えないか？」
「ええ、ベテランのメイドでしたらこんなのへっちゃらですわ。でも最近、暖かくなってきてますから。」
「そうか、体調には気をつけてな。」
「お気遣い、ありがとうございます。……あぁ、しんぺい神様から、あとで医務室に来るようにと。」
「……あぁ、今日だったか。ありがとう。」

こうやってメイドとも会話がちゃんとできるようになった。以前は怯えてなかなか話しかけても答えてくれなかったのだが、これもある意味成長と言ってもいいのだろう。
ーーー月日は流れる。その間に変わらないものもあれば、変わり、移ろいゆくものもある。それが世の理というもので、絶対に避けては通れないもの。それを受け入れることによって、全ては理にかなうのだ。

ふんふん、最近読んだ書物だが、なかなかいい読み物であった。1000年前にしては完成度の高い、才に優れた人の読み物。あの文の一節を読み直し、考え事をする。……しかし油断は禁物だ。曲がり角でどん、と、誰かにぶつかってしまった。

「……あ、」
「シッマ何してーーーあ、」
「！……シャオロン、コネシマ。廊下では走るなとーーー」

隣を横切る風。ふわり、無いはずのココアの香りが鼻腔をかすめる。2人が走り去ったあとを振り返ればそれはそれは、初めて見る人からしたら嫌われているよう。顔を伏せて、目も合わさんと言わんばかりに逃げていく。

「……A、」
「……なにも、コネシマとシャオロンを責めたい訳では無いんだけれど、伝える余裕もない。夕食は相変わらず私ひとりで食べてるし、やっと会えた、と思えば避けられる。……らんらん、」
「……そりゃあ、できるならAに傷をつけたくなかったよ。」

はてさて、どうなんだろうか。

"光すら入ってこなくなった右目"を覆うものに、少し触れた。