紅一点は事務所1の騎士様！？(6) (ページ16)

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-H.side- ページ16

『ねえAいつまで持つと思う？』
『俺1週間』
『3日も持たんとちゃう？』

歌舞伎の稽古中、Aがいないのをいいことに繰り広げられていた会話。
事の発端は楽屋割りをどうするかってところからだった。

『着替えのこと考えたら1人部屋じゃない？』
『俺もそう思う、1公演の日ってギリギリまでいないでしょ？』
「うん、ギチギチ」

共有カレンダーのスケジュールは常にAの予定でびっしりで、例えば夜公演しかない日は開演2時間前までドラマや映画のスケジュールが入ってる多忙ぶりだ。

「一応どうするか聞いた方がいいんじゃない？1人部屋選ぶ気がするけど」
『だな、今度会うとき聞いてみる』

じゃあA以外の楽屋割り決めるかー！と声をかけるふっかに、ふとAは1人部屋で大丈夫なのかと思い始めた。

『な、俺の予想通りやろ？』
「お前椿の前情報あんのずるくね？」
『それは関係ないやん！』

歌舞伎が始まって3日目の今日、昼公演を終えシャワーを浴び終えたAが向かった先は自分の楽屋ではなく目黒とラウールの楽屋だった。

『ごめん、騒いでていいからちょっと寝かせて...』

そういったかと思うと部屋の隅で小さくなって寝たらしい。というのも全部襖挟んで隣の部屋の康二が嬉しそうに報告してきたんだけど。

『めっちゃ気持ち良さそうに寝てんで、猫みたいに丸くなってんねん』
「あんまり騒ぎすぎて起こすなよ」

その日を境に、2公演の合間は目黒とラウールの楽屋で寝ているらしいA。

『あのぐらい騒がしい方が安心するんだよね、なんか』

『...ね？猫でしょ』
「...ほんとだ、まじで猫じゃん」

動画を見ながら頬を緩めていれば、そういえばなんですけど、と話し始めたのは楽屋で眠るA用に布団を買い与えた張本人である目黒。

『...俺、この間Aに告白したんですよ』
「...は？」
『好き、って伝えたんです』

フラれたけど、と話す目黒はなぜか楽しそうで。

『メンバーと恋愛することはない、って宣言されちゃいました』

そうなんだ、とひねり出した言葉は重たくて、ギリギリのところで続きを飲み込む。そんな俺を観て何かを察したのか、安心してくださいと声をかけられた。

『諦める気もないけど、困らせる気もないんで』

そう言われたとき自分がどんな顔をしたかなんて、鏡を見なくても解りきっていた。