紅一点は事務所1の騎士様！？(6) (ページ12)

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『Aー？起きてるー？』
「起きてる...」

楽屋をノックする音と声に返事をすれば、しんでんね～と笑いながら入ってきたのは奏だった。

『はい、ココア入れてきたよ』
「ごめんありがとう...」

ほら温めないと～とその辺にあったブランケットをかけてくれる奏の優しさが身体に沁みる。
SHOCKの公演ももうすぐ折り返し、そんなタイミングでやってきた生理はなぜか痛くて。いつもはこんなことないのにな、とメンタルまでずり落ちていく感覚がした。

『いつもこんな感じなの？』
「こんな重いの久々...」
『薬は？飲んだ？』
「飲んだ...」

少し寝る？と背中を擦ってくれる手が心地よくて、そのまま奏に体重を預ける。

『A、なんか悩んでる？』
「...なんで、」
『なんとなく、かな』

無理に話さなくてもいいよ。そういって背中を叩くリズムが心地よくて、気づけばそのまま眠りについていたらしい。気付けば横になっていて、時計は半周ほど進んでいた。

『おはよ、寝れた？』
「ごめ、ずっといてくれてた？」
『ん、気にしなくていいよ』

準備間に合う？と聞かれて頷けば、顔色よくなったねと笑ってくれる奏に安心する。

「...奏、あのね、」

相談したら、奏はなんて言うのかな。
そもそもなんて言えばいいんだろう、私は何に悩んでるんだろう。

『A？大丈夫？』
「...やっぱりなんでもない、そろそろ準備しなきゃ」
『...わかった、じゃあ俺行くね』

無理しないでね、と言っていなくなる奏にありがとうと伝えて鏡の前に座り込む。

「好き、ってなんなんだろ...」

メンバーから貰う愛情は、あったかくて、安心できて、何よりもそれに応えたいと思う自分はいるのに。
恋愛感情、というものが何もわからない。

「ハタチでこれはやばくないか...？」

どれだけ演じても、恋愛感情だけは理解できなくて。時々演じていても不安になるぐらいだった。

「...準備しよ、」

一旦、考えるのをやめよう。
それが後回しにしているだけなことに気付きながら、私はそこから逃げることを選んだ。