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『お世話になりまーす！』
リハーサルが終わり楽屋でYouTubeの撮影をしていれば、楽屋を訪れたのはMCであるハリー杉山さんがいた。
さっくんの回と言っても過言ではない人狼回や照くんのカラダの話で盛り上げて颯爽といなくなる姿に、MCの鏡だな...と思わず感心した。
「...すごいね、YTFFって」
『だなぁ、俺もああいう風にMCできる人になりてえな〜』
そう呟くふっかと目があって。じっ、と見れば不思議そうな顔で首をかしげられる。
「ふっかは、私たちにとって一番のMCだけどね」
『...A、
［幸屋、ちょっといい？］
「はい、いま行きます！」
ごめん、なんて？と聞き返せばなんでもないと首を振るふっか。なんとなく後ろ髪を引かれつつも、マネージャーの元に向かった。
『Aー？』
「佐久間くん、」
おーアガッてんね、と歩いてくる佐久間くんをまっすぐ見ていられなくなる。
本番前、舞台袖に移動した瞬間視界がぐらりと傾くような感覚になって。
あまりの緊張に全部の感覚がおかしくなる。
ライブだって、舞台挨拶だって、生放送だって出来たのに。
『A、A！』
「...はっ、ー、」
急に浅くなる呼吸に慌てて舞台袖へと走った。
『A！』
「ひか、」
『呼吸して、吐けば吸えるから』
ちょっとごめん、と私の胸に手を当てる照くんには、きっと異常なぐらい上がっている心拍数が伝わっていて。自分でも何が起きてるかわからない、なんて言えない。
言われた通りに空気を吐き続けていれば、徐々に呼吸が落ち着いていくのがわかる。
「...もう大丈夫、ありがとう」
そう伝えながら無意識に右腕に触れる私を観て目の前の人が苦しそうな顔をする。そんな顔、させたいわけじゃないんだ。
「照くん、ありがとう、」
もう大丈夫だから、戻ろう？
立ち上がって伸びをすれば、少し間を開けてついてくる照くん。舞台袖に入る一歩がなかなか進まなくて。ぎゅっと手を握って落ち着こうとしていれば、後ろからふわりと抱き締められた。
「照く、」
『みんなお前のこと大好きだから、いつも通りでいいんだよ』
それだけ言って離れた照くんにこくりと頷けば、私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。振り向けば佐久間くんが走ってきていて、そのまま私に抱きついてきた。
『...もう大丈夫そうだね、』
「うん、心配かけてごめんね」
『んーん、いいのよ』
はい俺とも！と手を広げる佐久間くんに、恥ずかしいけどそのまま胸に飛び込んだ。
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作者名：nio | 作成日時：2023年5月27日 20時
