紅一点は事務所1の騎士様！？(3) (ページ4)

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あの日から1週間が経ったものの、その後の進展は何もなくて。
向こうが動いてこない以上、警察に頼むのだって限界があった。

『...A、A！』
「え、ごめん全然話聞いてなかった」
『だから、今日昼で終わるしさ、ライブの後飯行かない？って』
「...あー、ごめん、今日予定あるんだ」

出てこないストーカーにだけ気を取られていられない。サマパラ後半戦がスタートし来月公開映画の番宣やイベント、そして何よりもう1通の手紙の件だってある。どう動けばいいのか正直頭の中はパンク寸前だった。

［お、みんな揃ってた？］

開きっぱなしのノックと共に楽屋に入ってきたのは滝沢くんで。全員で挨拶をすれば、ちょっといい？と呼ばれたのは私だった。みんなから集まる視線に気づかないフリをしながら、バッグに入れていた1枚の紙を持って楽屋を後にした。

「...あの、私も丁度話したいことがあって」
［宮舘とマネージャーから大まかな話は聞いた。
その件に関しては
「その事じゃないんです」

びっくりして固まる滝沢くんに1枚の手紙と画像を見せれば困惑した表情をみせていて。こちらを伺ってる滝沢くんから目を背けるようにして口を開いた。

「...実の母から、来た手紙です。
デビューする以上、正直隠していく方が面倒おかけすると思うので」
［この人が、お前の母親なのか、？］
「この手紙の番号は、昔から実家にかかってきていた番号なんです。
...この間、偶然会ってしまって」

そっか...とかける言葉を探してくれているような滝沢くんに申し訳なくなる。薄々気づいてはいたし、だから会わないように申し訳ないけど仕事だって私が選ばせてもらっていた。

［...まさか、お前の母さんがあの有名デザイナーだったとは、］

私のスマホをコトン、と置くとそのまま視線があって。

［...どうして頑なにモデルの仕事を断るのかってずっと考えてたんだ］
「モデル業をすれば、いつか母のデザインした服に袖を通さなきゃいけない日が来ると思って...」

業界の人間じゃなくても一度は聞いたことがある名前のデザイナーである母との接触は、きっとこの先仕事をしていく上で避けられない。

「実は、今日母と食事をするんです」
［...どうするかは、Aの意見を尊重するから］

迷惑かけるとか、そういうことは考えるな。
そういって撫でてくれた手の温かさに、少しだけ緊張がほぐれた気がした。