紅一点は事務所1の騎士様！？(3) (ページ28)

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『...A？』
「...なに？」

幸いなことに仕事の休みが重なっていたため私の怪我に関しては大事にしない方向で話が進んだ。メンバーや滝沢くんには反対されたけど、これ以上悪目立ちしたくないと伝えればそれ以上言われることはなかった。

『おやつ、なんか食べる？』
「...自分で食べられるから、いいよ」
『開けといた方が食べやすいだろ』

怪我をしてから2週間以上経ち、傷も大方塞がってきて右手も使って大丈夫だと言われている。
それでも何かとフォローしようとしてくるメンバーに、私のイライラはピークになっていたんだ。

「...自分でできるから！
お願いだから、何も出来ないみたいに言わないで、」
『A、』
「...ごめん、頭冷やしてくる」

勢いで投げつけた言葉に自己嫌悪で消えたくなった。
こんな気持ちになるなら、こんな気持ちにさせるならいっそ

「...デビュー、しなきゃよかった、」

思わずこぼれた言葉は、私以外に絶対聞かせちゃだめだったのに。

『...A、』
「...翔太くん、」

一番、聞かれたくない人に聞かれてしまった。
そう思った瞬間、呼び止めようとする翔太くんの声なんて聞こえないフリをしてその場から走り去ろうとした、のに。

『逃げんな、A』
「ちゃんと戻るから、離して、！」
『離すわけないだろ、1回落ち着けって！』

腕を振りほどこうとすれば久しぶりに聞いた翔太くんの怒鳴り声に思わず身体が萎縮する。そんな私を見て、翔太くんは空いている会議室へとそのまま足を進めた。