紅一点は事務所1の騎士様！？(3) (ページ25)

今日:3 hit、昨日:65 hit、合計:57,972 hit

＊ページ25

［だから、これはこの公式をはめて...］
「なるほど...！」

中学3年生にもなれば、みんな自分の進路で忙しいのか誰も私に関わろうとはしてこなくて、寂しいけどやっと平穏な日々を取り戻せたように思えた。
それでも違うのは、橘くんが側にいてくれたことだった。

少しずつ仕事が入るようになり、休む機会が増えた私にプリントと一緒に内容まで教えてくれる、家庭教師のような人で。
週に1回、放課後1時間。ジャニーズJr.の幸屋Aとしてじゃなく、1人の中学生として過ごせているような気がした。

［...幸屋はどこの高校行くの？］
「私？仕事もあるし堀越に行くつもり」

周りに迷惑かけられないし。そう話せばふーん、と聞いた割には興味のない返事が聞こえて。橘くんは？と聞き返せば地元では一番偏差値の高い高校の名前が上がり1人で驚いていた。

「...受験勉強もあるのにごめん、」
［人に教えた方が覚えられるから別にいいよ］

いつもそう言ってくれる優しさに触れる度に、胸がズキズキと痛む気がした。

［幸屋、ちょっと］

夏になり、映画の撮影に来ていた私を呼び寄せたのは私や他のJr.を見てくれていた当時のマネージャーで。どうしたんですか？と聞けば、1枚の写真を見せられた。

［...これ、幸屋だよな？］
「はい、」
［彼氏、なのか？］
「...違います！クラスメートです！」

そう否定すれば、だよなぁと頭を掻くマネージャーに何か迷惑をかけてしまっていることは中学生の私でもすぐにわかった。

［最近、変な車が後を追ってきたりしてないか？］
「...車、」

気を付けろ、お前週刊誌に狙われてるから。そう言ったマネージャーの顔はいたって真剣で。異端児である自分が世間にとってどれだけ面白いものなのか、改めて気づかされた瞬間だった。

［...幸屋、］
「あ、ごめん...勉強、もう大丈夫だから」

プリントも、もう大丈夫。
それだけ言って、私は週に1回の楽しみを自分から捨てたんだ。
それが、誰にも迷惑をかけない最善策だと思ったから。