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「 何でそんな顔してるの 」
「 え? 」
「 ……あぁ、安心して。男しか居ないって聞かされて来たらこうだったから。決して浮気とかじゃない 」
「 あ、いや…… 」
そんな事だろうとは思ってた。彼は元々こういう場所に積極的に来るタイプではないって知ってたから。高三の時のクラスの集まりでさえ、顔を出していた記憶が無い。
「 私も女子だけって言われて来たから、そこはお互い様というか 」
「 ……そう? 」
それにしては死にそうな顔してるけどね、って松村くん。
「 …死にそう? 」
「 うん 」
「 そっ、か 」
実は付き合ってる事忘れちゃうぐらいの関係性なんだよね、そう笑って言えたら良かった。
由宇ちゃんには強がってみせたけど、私はずっと気にしてるし、忘れて過ごすなんて出来ないし。……彼の事が変わらず好きだから、辛い。
松村くんの、黒目がちな瞳に何もかも見透かされている様な気がして。今日会ったばかりだというのに、何故かこの人には思っている事を全て打ち明けたくなった。
「 あの、……実は、大我くんとはもう終わってるのかも、って、丁度考えてた所で 」
小さな声で私がそう呟くと、驚いた顔をした松村くんは机の向こう側の喧騒にちら、と目をやって、少し考えた様な素振りをする。
その後、音ちゃんが居なくなって空いている私の隣を指差して「 ……そっち、座ってもいい? 」って酷く控えめに言った。
「 え…うん 」
「 隣の方が、小声で話しやすいかなって 」
「 あ、確かに 」
んしょ、って少しだけ間を空けて隣に腰を下ろした松村くんに目を向けて、有難うって伝える。別に、って淡々と答えた彼から何気なく動いた視線は、大我くんの方向へ。
こちらを向いていなかった筈の彼と、何故か、ぱちんって、視線がぶつかった。
一秒と経たないうちに、直ぐに逸らす。今度は私から。
「 どうしたの 」
「 うん? 」
「 顔、強張ってる 」
「 え。そう、かな 」
「 ……ごめん、やっぱ隣座るの嫌だったとか 」
「 え、!違う違う 」
松村くんの所為じゃないから、と慌てて、全力で首を振る。
……さっきまで、私の事なんか忘れたみたいに近くの人と談笑してたのに。
目が合った大我くんは、私が二、三度しか見た事のない、機嫌の悪い時にする表情を浮かべていた。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です!読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています! (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…! (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳰 | 作成日時:2023年12月17日 15時