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「 A、 」
「 ん、？ 」
名前を呼ばれて隣を向くと、何か言いたげな表情を浮かべている北斗くんは口を開きかけて、やっぱり辞めたのか、ぐ、と噤む。
それから視線を、私、ショートケーキ、ガトーショコラと移していって、また私を見た。
「 …、其方の、一口頂戴 」
「 うん、勿論いいよ 」
「 俺のも一口あげる 」
「 いいの？ 」
「 うん 」
多分北斗くんが言いたかったのはそんな事じゃないんだろうけど、触れないで居てくれたのなら、それには気付かない振りをしておこう。
その方が、上手く笑っていられる気がするから。
「 音ちゃん、フォーク貰っていい？ 」
「 あっ、ごめん気付けなくて 」
はい、と手渡された籠ごと受け取って、其処からフォークを二つ手に取る。片方は北斗くん、片方は自分に。
有難う、と零された声のトーンは未だ心配の色を含んでいて、なんだか申し訳ない気持ちになりながら、ガトーショコラにフォークをそっと刺して一口大に切り取る。
それを口に運ぼうとする前に、ふと、音ちゃんと一緒に食べている大きなパフェに夢中になっていた筈の慎太郎くんが、じっと私のお皿を眺めている事に気付いた。
何か付いているのかと思ってお皿をぐるぐる回して見るが、どうやらそういう訳では無いらしい。
「 慎太郎くん？ 」
「 んー？ 」
「 慎太郎くんも、一口いる？ 」
「 え？？ 」
「 え？……凄い見てるから、欲しいのかと、 」
「 あっ！ごめん、そういうつもりじゃなくて 」
早とちり、しちゃったみたい。
じゃあ何だったんだろうと首を傾げて慎太郎くんの言葉を待っていると、大した事じゃないんだけどさ、って前置きして。
「 きょも、聞いてないのに何で分かったのかなーって思っちゃって 」
「 え？ 」
「 ほら、Aちゃんがガトーショコラで、北斗が苺のショートケーキって事。パッと見反対っぽいじゃん？ 」
「 あ…… 」
「 田中くんから聞いたんじゃないの？ 」
「 あー確かに、それだ！ 」
ごめん、そんな考える程の事でも無かった！なんて慎太郎くんの声はもう、入って来ない。
……ねぇ大我くん。ガトーショコラの事、覚えてる？
浮き沈みの激しい感情が、また揺れた。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (
レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です！読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています！ (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…！ (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳰 | 作成日時：2023年12月17日 15時
