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恋というのは、本当に厄介なモノだなぁと、今更思う。
辛くなるだけ、苦しくなるだけ、って頭ではちゃんと理解しているのに、目が勝手に彼の背中を追ってしまう訳で。
沢山話してくれている慎太郎くんの声もそれにツッコミを入れる音ちゃんの声も、全く耳に入ってこない。
( あ……あの子、と、大我くん )
万年両目の視力2.0の私は、テーブルから、遠目でもしっかり彼の姿を目視できて。
何を話しているかまでは流石にこの距離じゃ分からないし、此方に背中を向けているから表情も読み取れないけど。二人の距離は……なんだか少し、近く感じた。
目が悪かったら何も知らなくて済むのにって、見てるのは自分のくせに、思ったり。
「 ………、あ 」
ぎゅいんと、首の向きを真正面に変えた。瞬間、向かい側に座る音ちゃんがギョッとした顔をする。
「 A、どうかした? 」
「 ううん、どうもしてない 」
「 今の絶対首痛くなるヤツじゃない?大丈夫?笑 」
「 へーき、笑 」
首なんかより何倍も、胸の奥の辺りが痛くて仕方ない。何か鋭利なもので抉られたみたいに、ズキズキと痛んでる。
「 そろそろ来るかなー 」
「 あれじゃない? 」
「 おっ!持ってきてるの樹じゃん、笑 」
私、ちゃんと上手く笑えてる、よね?
「 お待たせしましたー 」
「 はい!! 」
「 返事すんのはえーよ、商品名言わせろ。つーかこれ一人で食う訳? 」
「 な訳あるかーい! 」
「 私と二人で分けるよ 」
「 あー、笑 なるほどね? 」
「 樹、早く仕事戻ったら?? 」
「 分かった分かった笑 」
テンポ感の良いやり取りは、ちゃんと聞こえている筈なのに、やっぱり入って来ない。きっと、目の前で何度も、同じ光景がフラッシュバックして見える所為。
( ……本当に、良い感じなのかも )
多分、二人で冗談の言い合いでもしてたんだろうと思う。あの子が、笑いながら、大我くんの背中に触れた。
……ちらりと見えた大我くんの横顔。彼もまた笑っていた。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です!読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています! (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…! (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳰 | 作成日時:2023年12月17日 15時