４３ ページ43
.
「 樹、ちゃんと仕事して 」
「 いっ、てぇ…もうちょい手加減してよ〜、きょも 」
大我くん、だ。本当に、此処でバイト、してたんだ。
「 あー！そうか、樹ときょも同じバイトだったね！ 」
「 慎太郎、もうちょい声のトーン落として 」
「 あっ、ごめんなさーい 」
ほら樹、早く注文取って、って大我くんが淡々と言う。
変わらず綺麗に染まっている金髪は、前に会った時より少し伸びている気がする。それに加えて、白シャツ、腕まくってて、黒のスキニーに、焦げ茶色のハーフエプロン。
ほんの一瞬、緊張も何もかも、抱えていた事全部吹き飛んで、見惚れてしまった。
( バイトの制服、似合い過ぎてる )
思わず目を離せないで居ると、ちらり、金色の下の鋭い瞳が私を射抜いて、また息が止まる。
「 あ、きょも、この子この前会った、 」
「 知ってる 」
「 え？ 」
「 早く注文取ってってば 」
「 あ、あぁ、ごめん 」
それだけ言うと、カウンターの奥に戻って行く、大我くん。
" 知ってる "
私の話をしようとした樹くんに、大我くんは、ピシャリと強い語気でそう返した。
「 そっか、樹と高校一緒だったんならきょもとも一緒って事だもんね 」
「 え！この前話した時そんな事言ってなかったじゃんかぁ 」
納得した様に話す慎太郎くんに曖昧に頷いて、不満そうな表情を浮かべる音ちゃんに、ごめん、態々言う事でも無いかと思ってた、って苦笑いしながら謝る。
( ……完全に、怒ってた、あれは )
それが何に対してなのかは分からないけれど、大我くんが怒ってる、その事実だけはハッキリと理解出来た。だって、彼の視線が、声が、凍て付く様に冷たい。
どうして。やっぱり勝手に、本人から教えられてもないバイト先になんて、来たから？
「 A 」
「 ……あ、ごめん、何？ 」
「 注文。待ってるよ樹 」
「 あ、あぁ…！ 」
慌てて開いたままのメニューを指差す私に、隣の北斗くんから痛いぐらい突き刺さる視線。
北斗くんの方を向いてなくても分かる。きっと、凄く、心配されてる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 804人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (
レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です！読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています！ (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…！ (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳰 | 作成日時：2023年12月17日 15時
