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音ちゃんと大学で別れて、気付いたら自分のアパートに帰ってきていた。
さっき聞いた事が、頭から離れない。
噂は、噂だ。この目で見た訳でも、本人に聞いた訳でもないのに、勝手に疑うなんて、良くない。
……良くないって分かっていても、不安で、仕方ない。
「 ……大我くんの彼女は、私だよ 」
言えなかった。音ちゃんに。言い切る自信がなかった。
そう思ってるのは私だけかもしれないって、またネガティブが顔を出した。
( こんなの、本人にサッと聞いてサッと確かめれば良いだけの話なのに )
彼とのトークルームを開いて、通話のマークをタップして、音声かビデオか選ぶ所までは行く。
けど、其処からどうしても、指が動かない。
疑ってしまっている時点で失礼かもしれない、とか、突然の電話は迷惑かもしれない、とか。汎ゆる負の感情がぐるぐると回る。
( ……でも、大我くんが )
大我くんの所為で、こんなに不安になっているのだから。彼以外の人ではどうにも出来ないんだ。
大きな深呼吸を一つ。えい、と音声通話の文字を押した。
耳に押し当てたスマホから呼出音が聞こえるのと同時に、どんどん速さを増していく心臓の音。
『 …もしもし 』
出て欲しい、出て欲しくない。
鳴り続ける呼出音を耳にしながら考えていた言葉は、彼の声を耳にして、全て吹っ飛んだ。
『 どうしたの 』
何かあった?って電話越し、少し低い大我くんの声はなんだか優しくて、それだけでもう胸が痛くて、無性に泣きたくなる。
「 …ごめんね、急に電話して 」
『 ううん 』
「 今、何してる?時間大丈夫? 」
『 バイト。でも休憩中だから、平気 』
バイト、してるのは本当なんだ。始めてたなんて、それすら知らなかった。
黙ってしまった私に、カフェのバイト、樹に誘われて最近始めた、って大我くんが言う。
電話の向こう側の大我くんの声は、何故か少しだけ焦っている様にも感じた。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です!読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています! (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…! (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳰 | 作成日時:2023年12月17日 15時