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大学のほぼ中心にある食堂は人が多かったから、少し人通りが減った理系の学部の近くの方に来た。お盆を手に取って、列に並ぶ。
「 どれにしよう… 」
「 こういうの悩むタイプ? 」
「 優柔不断だからねぇ、めちゃくちゃ悩むタイプ 」
「 うん、なんかそれっぽい 」
「 貶されてる?笑 」
「 いや。相田さんってどんな事でもじっくり考えそうだなって 」
慎重なのって、悪い事じゃないと思うよ。なんだか褒められたみたいになって、それはそれで照れ臭い。
散々迷った挙げ句無難に肉うどんを選んだら、松村くんは俺もそれにしよ、って私と同じ肉うどん、量多いのを頼んでた。
お金を払って、空いている机に向かい合って腰を下ろす。
「 ん、美味しい 」
「 学食って安いけど普通に美味しいから良いよね 」
「 うん、でも暑いからざるうどんの方にすれば良かったかも 」
「 まぁ夏に食べたくなる物ではないかもね、肉うどん 」
「 なら何で同じ物頼んだの笑 」
「 なんとなく? 」
なにそれ、って笑って、暫くお互い無言でうどんを啜る時間が続いた。
何があったか聞いてこないんだな、なんて思ったけど、途中で無理に聞き出そうとしないんだって気付く。話したかったら話しなよ、って事かな。
…やっぱり、めちゃくちゃ良い人じゃないですか、松村くん。
「 あのね。さっき大我くんに会ったんだけど 」
「 ん、うん 」
「 あ、二人きりじゃなくて、正確には大我くんを連れてる共通の知り合いに会って 」
「 …それって、樹だったりする? 」
「 え。田中くんとも知り合い? 」
「 同じ学部だから。仲良いよ 」
「 あ、そうなんだ 」
田中くん、同じ大学なのは知ってたけど、大我くんと学部まで一緒だったんだ。本当に仲良しなんだな。
「 ごめん、話遮った。続けて 」
「 あ、うん。それで、田中くんに声掛けられて喋ってたんだけど。大我くん、一回も此方見てくれなくて 」
「 マジ? 」
「 大マジ 」
目の前で松村くんが口元までうどんを持ち上げた侭驚いた顔をするから、凄く悲しい筈なのにちょっと笑ってしまう。
「 え、なに笑ってんの 」
「 いや、ごめん笑 」
「 …いよいよ壊れた? 」
「 そんな大袈裟な、笑 」
そう笑いながらも、壊れるっていう表現はもしかしたら的を得てるのかもしれないと思った。心の何処かに、確実に何かが少しずつ、積もってる気がする。放って置いたら、いつかはち切れそうな。
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鳰(プロフ) - akikumaさん» 嬉しいコメント、有難うございます。大好きだなんて、恐縮です……。不器用な恋模様をダラダラと書いてしまっていますが、もう少しだけ引っ張ります。どうか最後まで楽しんで頂けますように😌 (4月25日 16時) (レス) id: 1722422845 (このIDを非表示/違反報告)
akikuma(プロフ) - 大好きな作品です!読んでてとても切なくなります🥺続き楽しみにしています! (4月23日 1時) (レス) @page50 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
鳰(プロフ) - ごましおさん» 暖かいコメント、有難うございます。前にも読んで下さっていたんですね、また出会えて凄く嬉しいです。自分なりのペースにはなりますが、今回は最後まで書き切るつもりですので、お付き合い頂けましたら幸いです。 (1月30日 0時) (レス) id: 348ed03cac (このIDを非表示/違反報告)
ごましお(プロフ) - 前回書かれてたときからこの話が大好きだったので再掲してくださって本当に嬉しいです(T-T)これからも楽しみにしてます…! (1月24日 10時) (レス) @page22 id: 4d6203abd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳰 | 作成日時:2023年12月17日 15時