想 い 無 き

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「 ……松村くん、 」
「 どうも 」






大学内で会うの初めてだね、なんて少しだけ笑った松村くんは私の顔を見るや否や、神妙な面持ちで…何かあった？って聞いてくる。

その急激な表情の変化がなんだか面白く思えて、ふ、と吹き出した。






「 え、笑っ…？ 」






私の反応が予想外だった様で、ぐわりと目を見開く松村くん。またしんどそうな顔してるから心配したのに、って小さく溜息吐いた彼に、ごめんねって謝った。






「 でも何かあったのはホントでしょ 」
「 まぁ…うん、笑 」
「 あれから、話せた？ 」
「 ……話せてない 」






折角背中を押してくれたのに、結局何も出来ていない私に呆れるかなと思ったけれど。「 そっか 」って頷いた松村くんの表情は、優しい侭だった。






「 昼ご飯食べた？ 」
「 あ、ううん。まだだよ。今日は食堂行こうと思ってて 」
「 俺もまだ。なら一緒に食べよ 」






え、いいの？って聞く前に、歩き出す松村くん。

その背中を追って、特に意味もなく斜め後ろを歩いていると、通り過ぎる人の視線が必ず彼を捉えて行く事に気が付いた。






( そうだよね、松村くん、カッコイイもんね )






大我くんとは違った系統の顔立ち。だけど、彫刻みたいに整ってて、美人さんだなぁと初めて顔を合わせたときから思ってた。

大我くんが西洋人形みたいだって例えたとしたら、松村くんは日本人形っぽい。……この例え方は伝わりにくいと思うけど。

あと、私にはちょっとよく分かんないオシャレしてる。松村くんだから着こなせてるんだろうな、多分。






「 どうしたの 」
「 え？あぁ、なんでもない 」






ぼうっと考えていたら歩くのが遅くなっていた様で、慌ててスピードを上げた。

変に心配される前に話を変えようと思って、今日は眼鏡じゃないんだねって私から声を掛けると、普段はコンタクトのほうが多いかな、って松村くん。

眼鏡の方が良い？なんて冗談めかして聞かれたから、何方もイカしてるよって答えたら、イカしてるって表現が古かった所為か笑われてしまった。






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