私の最期・肆 ページ5
人間でしたよ。
たった数刻前までは、一人の人間でしたよ。
でも今は、紛れも無い鬼です。
貴方に殺されなくてはならない、ただそれだけの生き物なんですよ。
・・・義勇さん。
*
『・・・泣か、ないで』
冨岡さんは泣いていた。
声もあげずに、その陶器のような白い肌から涙を流していた。
私は左腕を、彼に方へと伸ばす。
涙を拭っても、冨岡さんの顔は返り血と涙でぐちゃぐちゃだった。
「・・・・・・A」
『はい・・・』
私の名前を呼ばれたかと思えば、彼は腕を解いた。
そして、傍に置かれている刀を手に取る。
「お前が鬼ならば、俺はお前を斬らねばならない。俺は鬼殺隊の柱として。お前は鬼として」
『・・・ええ』
青く光る刀が、喉元に突き立てられた気がした。
「・・・すまない」
冨岡さんは刀を振る。
私はもう一度目を閉じた。
これでいいんです、義勇さん。
最期を貴方の刃で迎えられることは、最善のことなんですから。
私がここで死ねば、貴方はまた幸せになれますから。
「_______だろう」
『え・・・?』
しかし、刀は私の頸に到達する前に止まった。
何やら冨岡さんが喋った気がするが、声が小さくて聞こえない。
「出来る訳無いだろう!お前を、自分の恋人を殺すことなど!」
かん高い音がして、刀が地面に落ちた。
いや、冨岡さんが握るのをやめたと言った方が正しい。
「もう一度、もう一度お前を幸せにするから!だから・・・!」
冨岡さんは、もう一度私を抱きしめた。
私に、縋ってくるように。強く強く。
「今だけは、このままでいさせてくれ・・・」
不思議と、私の頬にも涙が伝っていた。
・・・おかしいな。
鬼になったら、泣けないと思っていたのに。
血に染め上げられた腕で、私は冨岡さんの腰に腕を回した。
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棗子(プロフ) - ふぉとさん» 前作から読んでくださった方ですよね?!ありがとうございます(*´∀`*) (2019年9月16日 14時) (レス) id: 6ccb60d888 (このIDを非表示/違反報告)
棗子(プロフ) - みゃーみさん» ありがとうございます!こちらこそみゃーみさんの作品読んでます、大好きです! (2019年9月16日 14時) (レス) id: 6ccb60d888 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉと - これからも応援してます!!(*゚∀゚*) (2019年9月16日 11時) (レス) id: f531edd03e (このIDを非表示/違反報告)
みゃーみ(プロフ) - 棗子さんの作品はいつ何度読んでも泣けてしまします。大好きです。 (2019年9月15日 11時) (レス) id: 49c1853634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棗子 | 作成日時:2019年9月15日 8時