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私の最期・弐 ページ3

使用人たちも就寝し、時刻も深夜を回るころだった。

屋敷には、私と冨岡さん二人だけの呼吸音が、静かに聞こえる。

私は、そんな冨岡さんの手を固く握り締めた。

『あの・・・冨岡さん』

同じく私の手を握っていた冨岡さんが、ピクリと反応した。

「・・・はあ」

そして深い溜息をついたかと思えば、そのまま私の肩に頭を預けてきた。

ええと、こういう時はどういう反応をすればいいんだろう。

私の顔、赤くなってないかな。

手を握っていない方の手が腰に回され、さらさらした黒髪が肌をくすぐる。

「A、明日は何の日だ」

『私と冨岡さんが祝言を挙げる日です。勿論、忘れてなんかいませんよ』

肩に持たれかかったまま、冨岡さんはもう一度溜息をつく。

その息が、先ほどのように肩をくすぐった。

「お前の苗字は、明日から冨岡になるだろう。自分の名前を自分で呼んでどうする」

『ごめんなさい、やっぱりまだ慣れていないというか、恥ずかしいというか・・・』

「まだ、義勇と呼んだのは一回だけだからな」

『なんで覚えてるんですか・・・』

それきり、冨岡さんは何も言わない。

え?私、冨岡さん怒らせちゃいました!?


しかし、それも束の間。

冨岡さんは薄く微笑みながら、顔を上げた。

そして、その淡麗な顔が私の唇と重なった。

『ん・・・・・・』

少し長い間呼吸を止めた後、意外にも冨岡さんの顔はすぐ離れた。

「今日は、これでお相子だ」

『と、冨岡さん』

「? なんだ?」

寝る支度をしていた富岡さんを呼んだ。

名前ではなく、苗字で。

『・・・やっぱり、何でもありません。ごめんなさい』

「はあ、そうか」

冨岡さん不思議そうな顔をした後、少し頷いて後ろを向いた。

私は吐き出しそうになった言葉を、脳内で咀嚼する。




『___大好きですよ、冨岡さん』

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棗子(プロフ) - ふぉとさん» 前作から読んでくださった方ですよね?!ありがとうございます(*´∀`*) (2019年9月16日 14時) (レス) id: 6ccb60d888 (このIDを非表示/違反報告)
棗子(プロフ) - みゃーみさん» ありがとうございます!こちらこそみゃーみさんの作品読んでます、大好きです! (2019年9月16日 14時) (レス) id: 6ccb60d888 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉと - これからも応援してます!!(*゚∀゚*) (2019年9月16日 11時) (レス) id: f531edd03e (このIDを非表示/違反報告)
みゃーみ(プロフ) - 棗子さんの作品はいつ何度読んでも泣けてしまします。大好きです。 (2019年9月15日 11時) (レス) id: 49c1853634 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:棗子 | 作成日時:2019年9月15日 8時

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