久々知くん、大好きです (ページ5)

今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:5,893 hit

４話ページ5

久々知くんは私を抱き上げると、すぐに城を抜け出して森林に入った。そこには五年生の姿。

まだ私の息は浅い。

久々知くんは抱き上げたまま私を見ると、怒った。

久々知「なんで簡単に命を投げ出そうとするんだよ‼‼」

理不尽だけど、嫌じゃなかった。どうしてかは分からない。

『っ…降ろしてよ……久々知くん、…ゲホッ、ゲホッ…っ…私は…死んでも、いいの…』

竹谷「！！お前今！！！______」

鉢屋「よせ八左ヱ門！！！」

私に掴みかかろうとする竹谷くんを鉢屋くんが抑える。

『…ごめんね……っ……でも…っ！』

突然腕に痛みが走る。見ると、私を支える久々知くんの手が腕に食い込んでいた。

『久々知、くん？』

どうして？どうして、私の事嫌いなんでしょ？

『なんで、…泣いてるの？』

私の薄れる意識の中で、彼は泣きながら叫んだ。

久々知「なんでって！そりゃあ、たとえ嫌いだとしても誰かが死のうとしているのは悲しい事だろう！？」

あぁ、そうだった。君は、

優しいんだった。

私はそこで、意識が途切れた。

ーーー兵助sidーーー

こんなにも人を嫌いになったのは初めてだった。

僕は同じ学年の川田Aが嫌いだ。何を考えているのか分からないし、何より、笑顔が好きじゃ

なかった。無理やり作っているような、でも悲しいとかいう感情ではなくて、何か裏がありそうな

笑顔で、彼女を敵に感じている。

だから今まで、仲良くならないように冷たく接してきた。それでも彼女は

『ごめんね、久々知くん』

笑っていた。

正直不愉快だとも思った。後輩に優しいみたいだけど、その笑顔の裏で後輩をいじめているのでは？

とも考えた事がある。それは勘右衛門に殴られたけど。

でも、ペアのくじ引きで一緒になった時に、気遣いか彼女は自分１人でいいと主張していた。

(…ありがたいけど…さすがに１人は…)

多少心配はしたけど、彼女は笑って先生に「本気ですよ？」と言っていた。先生は仕方なく了解した

けど、その後彼女は…

悲しい顔をしていたのだ。

初めてだった。彼女の悲しい顔を見るのは…。