久々知くん、大好きです (ページ4)

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３話ページ4

私の潜入先のお城は、最近できた「赤松城」。

訓練内容は「お城に隠した密書を奪え」というものだった。

(密書は偽物だけど、本物見つけちゃったらどうしよう)

内心不安ながらも、簡単に城の中に入れた。警備がガバガバだ。

『…あった！』

女中の部屋の中の深ツボの中に隠してあった。それをすぐに取り出すと、懐に入れて天井裏に飛んだ

『…ん？』

お殿様の部屋の上を通ろうとした時、突然手元から煙が立ち込めてきた。

隙間から部屋を覗くと……火。

『っ、火事だ』

忍び装束のマスクを付けると、煙を吸い込まないようにした。見たところお殿様や城の者達はみんな

逃げたらしい。密書に夢中になってしまい気付かなかった。私も早く逃げ出そうと進んでいくと、も

う天井裏も火の海だった。さっきいたところが幸いまだ大丈夫なだけだったのだ。

逃げ場を、失ってしまった。

『…あーあー…なんで気付かなかったんだろう…馬鹿だなー私…』

こんな時なのになぜか冷静でいられた。

怖くなかった。悲しくなかった。寂しくもなかった。むしろ、

『……良かったー…』

嬉しかった。

好きな人から嫌われると実感する度にひどく痛む胸とも、友達がいなくて寂しかった自分とも…

お別れできるから。

『でもね、久々知くんだけは…大好き…たとえ嫌われていようとも』

最後の言葉のように呟くと、自然と涙が出てきた。涙は落ちて、ジュッという音とともに手元まで来

ていた小さな火を消した。

『…ごめんね』

なんの罪もない自分の体に謝ると、煙避けにしていたマスクを、顎まで下げた。

しばらくすると途端に目眩がして、倒れこむ。頬に伝う涙は、切ないものだった。

『…久々知…くん……』

彼の名前を口に出した途端、突然屋根に穴が空いた。突然のことで薄れていく意識も戻り驚く。

だって、そこには…

久々知「何勝手に死のうとしてるんだよ‼‼」

怒った顔をした、彼がいたから。