二頁 ページ4
目の前には幼い私と春音が手を繋いで座っていた
春音は空いた手で涙を拭っている
春音は可愛くてモテる
だからよくいじめられていた
そしてそれを守るのが私の役目だった
…でも春音は成長して強くなった
陰口をものともせず、自分に自信を持つようになった
そんな春音を再び泣かせる原因が私になるなんて夢にも思わなかった
幼い頃の景色が遠のいていく
それに手を伸ばしたが
その手は空を切った
……………
………
…
鼻につく独特な薬の匂いがした
ここは病院?助かった?
目をゆっくりと開ける
?「おや、目が覚めましたか。」
私を覗き込む人
医者…?にしては白衣を着ていないし、白の袴?を着ている
頭には白の頭巾
首を動かして周りを確認する
木材の天井に木の箪笥、床は畳、布団は敷布団だ
明らかに病院ではない
『ここはどこ…。』
?「保健室です。あなたは大怪我をして、こちらに運び込まれたのですよ。」
『保健室…?運び込まれた?』
状況が飲み込めない
病院に搬送されたのではないのか
身体を起こそうと力むと全身が酷い痛みに襲われた
『ゔっ。』
「起き上がっては駄目です。骨折はしていませんが打撲や裂傷、頭から血を流していたんですから。絶対安静ですよ。」
この痛みで、トラックにはねられたのに、骨折していない…?
腕を動かして頭を触ると包帯が巻かれていた
服も変わっている…これは浴衣…?
先程から違和感が拭えない
それになんだか見られている気がして背中がゾワゾワする
混乱する頭がズキズキと痛みだした
?「まだ安静に。これは痛み止めですので、飲んで休んでください。」
『…ありがとうございます。』
薬が飲みやすいようにそっと上半身を少しだけ起こしてくれる
小さな紙の包みと湯呑みを差し出される
包みを開くと、薬が入っていた
さっきから時代錯誤じゃないかと思いながら、湯呑みに入った水で痛み止めを流し込んだ
苦味が口の中に少しだけ残った
『ありがとうございました。』
布団をかけ直してくれたお医者様?に一つの違和感を問う
『あの…この部屋にはあなただけですか?』
?「…ええ。ここには私とあなただけですよ。」
真っ直ぐ私を見る目には嘘がないように見える
しかしどうしてか、私達だけではない気配がする
そんなことを考えているうちに眠気が襲ってきた
痛み止めの効果だろうか
目を瞑ると意識は遠のいていった
70人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜(プロフ) - とても素敵なお話ですね〜!!前作と同様、応援させて頂きます!!これからもお体に気をつけて更新頑張ってください✨✨ (2022年11月23日 19時) (レス) id: 7d2166206e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リーヴル | 作成日時:2021年4月11日 16時