【忍たま】ひとえに縁となる (ページ2)

今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:10,405 hit

零頁ページ2

春音｢…でね！それがとっても可愛くて…！｣

春音の話を右から左へと流しながら今日の夕飯を何にしようかと考える

春音｢もう！Aちゃんってば聞いてないでしょ。｣

私が話を聞いていないことがバレて春音は頬を膨らませている

相も変わらず擬態は完璧
ふわふわの髪に小柄で、守ってあげたくなるような可愛い容姿

『ほんと春音は男の純情を打ち壊す才能あるね。』

春音｢なによ、いきなり。努力の結晶と言って欲しいなあ。｣

方や私は対照的
周りからは、なんで2人の仲が良いのか分からないと噂の種らしい

努力の結晶か…
春音の母である美香さん曰く、｢女を磨けば得をする。｣らしい
春音自身もそれを座右の銘にしている

表情をころころ変えながら、再度私に話し続ける春音
聞いていないのに、やくもまあ…

『前見て。信号赤だから。』

春音｢わっ、ありがと。Aちゃんかっこいい。惚れちゃう。｣

『茶化さない。』

再び信号が青に変わる
春音は私の前を走って、私と向かい合うように立った

春音｢ねえAちゃん、たまには家に夜ご飯食べに来ない？パパとママも会いたいって。｣

『2人が？…迷惑じゃないのなら久しぶりにお邪魔するよ。』

春音｢迷惑なわけないよ！あ、パパが道場にまたおいでって。｣

『そうだね、近いうちにまた。』

おじさん容赦ないんだよなあ…
ため息をついた

その時だった

突如エンジンの音がした

道路を見ると減速せずにこちらに走ってくる車

信号はまだ青なのに

このままじゃ春音に当たる

その後は考えるよりも先に身体が動いていた

『春音………！！！』

春音｢え｣

私は力の限り春音を突き飛ばした
その瞬間、私の視界は反転した

車が横転する大きな音と悲鳴が聞こえる

春音｢そんなっ！Aちゃんっっっ！！！｣

春音は私を見ている
ポロポロと涙を流している

春音｢今救急車呼ぶからね！助かるからね！｣

春音が泣くなんて何年ぶりだろうか

春音｢目を閉じちゃダメ！｣

手が動かない…ゆっくりと瞼が下がる
『泣かないで』その言葉をかけることも、涙を拭うこともできないまま意識はプツリと途切れた