┏綾部喜八郎 ページ18
私は穴の中に落ちていた
誰かを庇ってでも、降りたわけでもなく、罠にかかったのだ
私を見下ろす彼は、お決まりのセリフを言った
喜八郎｢だぁいせいこう。｣
『…うそぉ。あれ以降も私の部屋の前には一度も落とし穴掘ったことなかったのに。』
喜八郎｢ええ、そうですよ。あなたが絶対にここは掘らないと安心して歩けるんだと、油断するまで待っていました。｣
『何とか逃げ切るつもりだったのにな。』
喜八郎｢残念でしたね。｣
比較的浅い
手を伸ばせば彼が引き上げてくれるだろう
しかし、彼は私を見下ろしたままだ
喜八郎｢…これで満足だったつもりでいたんです。…帰ると聞きました。僕はあなたに帰って欲しくありません。｣
私の目をじっと見つめる彼の目は真剣そのものだ
喜八郎くんのこんな顔を初めて見た
喜八郎｢ずっと僕の落とし穴に入れて、あなたを閉じ込めておきたいと思っているんですよ。怖いでしょう？｣
『…私は出るよ。1人で閉じ込められるなんて嫌。だって、喜八郎くんと一緒に話せないじゃない。』
喜八郎｢ずるいですね。なら僕と一緒に落とし穴に閉じ込められますか？｣
『ふふ、それは面白そうだね。』
彼は降参だとでも言うように笑って、手を伸ばした
それを握って私は落とし穴から出た
『…出してくれて、ありがとう。』
喜八郎｢これから、あなたを落とせなくなるのは残念です。｣
『喜八郎くん、そのことなんだけどね。私、帰らないよ？』
喜八郎｢…は？｣
彼は目を大きく見開いた
誰から聞いたんだろうか
この様子だと本当に帰ると勘違いしていたのか
『ちなみに誰から聞いたの？』
喜八郎｢立花先輩。｣
『あの人は…。』
喜八郎｢僕が騙されるなんて…。｣
『騙されてしまうほど、私が帰るのが意外じゃなかったの？』
喜八郎｢いえ、僕がずっとAさんと居たいっていうわがままですよ。立花先輩にはバレていたようですけど。｣
喜八郎くんは不満げに頬を膨らませた
彼にしては珍しくコロコロと変わる表情が新線で和んでしまう
『これからもよろしくね。』
喜八郎｢はい。これからも僕のことを考えてくださいね。そして、僕に落とされてください。｣
『落ちるのはもう良いんじゃないかな？』
喜八郎｢まだまだですよ。卒業までの2年の間で頑張りますから。｣
そう言って笑った喜八郎くんは、私の頬についた土を拭った
そして、私の手を引いて歩き出した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 231人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
澄香 - 完結おめでとうございます！結構前の作品ですが、、、とても素敵な作品でした！ (2月3日 20時) (
レス) @page21 id: 3292c399a2 (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 完結おめです!!!!リーヴル様の他の作品を見てきます(^^ω) (2023年1月24日 18時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうDX - 結構前の作品ですが, 完結おめでとうございます。読んでしまったら読む手が止まらなくなる,そんな心惹かれる素敵な作品でした。キャラ達の夢主への心情の変化や夢主の心の変化が少しづつ変わっていくのがとても面白かったです。本当にありがとうございました！！ (2022年8月11日 0時) (レス) @page21 id: b43443e8a9 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高に面白かったですし、めちゃくちゃ泣きました。本当に素敵な作品でした。完結、寂しいですがこれからも頑張ってください！本当にありがとうございました！ (2022年1月19日 18時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 本当に面白かったです！何で今まで気づかなかったんだろう、と思うくらいの傑作です。オチが多数あったり、作中に伏線を入れていたりと工夫がされていて、読みごたえがありました。最高の作品をありがとうございました！ (2021年12月15日 18時) (レス) @page21 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リーヴル | 作成日時：2021年3月24日 1時
