【忍たま】遠慮させていただきます。2

64.星を見に行こう ページ21

能勢九作side


きり丸から本の整理が終わっていない本棚を聞いて、きり丸、怪士丸、俺の3人で分担して作業する
ちらりと先輩と天女の方を見る
何か話しているようだがここまでは聞こえない
3人とも目線は下にあり手を動かしているため、話しながらも真面目に作業をしているようだった

忌々しい前の天女のことを思い出す
天女によって2人の優しい先輩は変わってしまった
俺たちには一切目もくれず、天女に付き従った
俺たち後輩に向ける視線はとても冷たいものだった
あの時の視線を思い出すだけで震えそうになる
頼れる先輩はいなかった
どんなに辛かろうと、1年になるべく被害がいかないように務めた
天女が天に還されたことを聞いて、元の先輩に戻ってくれると思った
でも違った
先輩は悲しい目をしていた
申し訳なさそうに、自分たちに近寄らなくなってしまったのだ

新しい天女が来た
また、また、平和を壊すのかと恐れた
しかし新しい天女は上級生を惑わせることはなかった
以前のようなことにはならないと安堵した
元の関係に戻れなくても先輩がもう苦しまないのならそれでいいと、自分の望みに蓋をしてしまった


『向こうの手伝いは終わったよ。まだこっちの仕事は残ってるかな？』

きり丸｢もうこの棚で最後です。｣


いつの間にか天女はこちらに帰ってきていた
天女はしゃがんで俺を見る


『能勢九作くん、君の話が聞きたい。質問してもいいですか？』

久作｢……何？｣

『中在家くん、不破くん、2人の先輩のこと好きですか？』

久作｢なんであんたにそんなこと答えなきゃいけない。｣

『じゃあ、きり丸くん、怪士丸くん、2人の後輩のこと好きですか？』

久作｢だからなんであんたに…！｣

『心の中でいいんです。答えてください。』


なんなんだ本当に
この人が何をしたいか分からない
答えなんか決まってる
でも望んじゃいけないんだ
我慢していればこれ以上何も失わずに済むから


『能勢九作くん、君は十分すぎるくらい大人だ。でもね、まだ11歳なんだ。望んだっていいんです。もう我慢もしなくていいんです。…自分の気持ちに素直になっていいんです。』


ぐっと溢れそうになった何かを必死で抑える
彼女は遠慮がちにそっと俺の手を握り手を引く
きり丸と怪士丸も｢おいで｣と言われて後について行く
彼女は中在家先輩と不破先輩の前に立った


『…今日は星がとても綺麗に見えるだろうね。さあ、共に最後の夜の星を見に行こう。』

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