【忍たま】遠慮させていただきます。2

61.同時通訳 ページ18

図書室に着いた

きり丸｢お手伝いとしてAさん連れてきましたー。｣

『失礼します。』


戸を開けて静かな図書室に入る
紙と墨の匂いがした
本の匂いはとても落ち着く


中在家くんは私を見て少しだけ礼をしてくれた
彼も綾部くんとは違ったタイプの無表情で何を考えているか分からない
初めて字の読み書きの本を借りに行った時は私でも敵意が分かるくらい怖かった
しかし、すぐにでも字を覚えたかったため貸してくださいと床に頭をつけてお願いした
中在家くんは無言で本を持ってきてくれた
私がその読み書きの本を手に勉強してる間、私の方をずっと見ていた
一言も会話は無かったが、あれから何か変わったのだろうか

不破くんも私を見て少しだけ視線を泳がせた後礼をしてくれた
最近本を借りに行くことが増えた
その度に彼はおすすめの本を貸してくれるようになった
何か言った方が良いと思って、本の感想を言うと嬉しそうにはにかんだ
私が感想を、不破くんがこの本の何がおすすめかと、本のことだけを少しだけ話すようになっていた

能勢九作くんやはりというか私を疑わしそうに睨んでいる
私がきり丸くんと手を繋いでいることに驚いているようだった
表情が隠せていないのはやはり2年生だからなのか

二ノ坪怪士丸くんは不安そうに見つめてはいるが怯えなどはない
なんというか実際に見ると本当に細い
ちゃんと食事はとれているのか心配になるし、世話を焼きたくなる


長次｢……ﾓｿ、……ﾓｿ。｣

雷蔵｢今日も変わらず、本の整理や貸出カードの確認をします。｣


これが同時通訳かと感動しながら聞く


雷蔵｢地味な作業ですが、よろしくお願いします。｣

『いえ、こういう作業は事務の仕事で慣れているのでお役に立てると思います。こちらこそよろしくお願いします。』

長次｢…分からなければ聞くといい…ﾓｿ。｣


とても小さな声だったが今のは聞こえた
｢はい。｣と頷いた
きり丸くんと一緒に本を整理する作業に取りかかった


きり丸｢そう言えば、Aさんは図書室には来たことあるんですか？｣

『うん、時々本を借りに来てるよ。』

きり丸｢そうだったんですね。どんな本を読むんですか？｣

『そうだなあ…。なんでも読むけど、ここに来てから特に読んでるのは日常を綴った物語かなあ。』


言いながらこの前読んだ本を取り出し見せた


きり丸｢へぇ、面白そうっすね！今度借りて読んでみようかな。｣

『うん、おすすめだよ。』

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