58話 ページ9
-深澤side-
自分を嘲って蔑んで、メンバーと顔を合わせては怯えて逃げて。
そんな日々を重ねる中、滝沢くんから食事のお誘いが来たのは…宛ら溺れる寸前の俺の前に現れた、助け舟の様だった。
家族と事務所以外で、唯一病気の事を知る滝沢くん。
母さんと父さんに心配を掛けるのが嫌で、実家にも頼れない今…俺が救いの手を乞えるのは、亮平以外でこの人だけ。
だからか飲み物を注文してすぐ、弱音を全て吐き出してしまった。
深｢俺、もう限界なんですよ…｣
滝｢それは辞めたいって事か？｣
深｢いや…何度も辞めたいと思ったけど、今は辞めたくない。とは言え、辞めざるを得ない時が近い内にきっと来るじゃないですか。｣
ずっと考えてた。
メンバーに病気の事を話しても話さなくても、俺には"ここまで"っていうリミットがある。
現に今、俺は片肺に爆弾を抱えてて、じきにそれは全身に拡がる。
体力だって無いし、アクロバットもいつ出来なくなるかの瀬戸際。
これ以上アイツらに迷惑をかける前にって思うのは、もはや必然。
でも、烏龍茶を煽ってシラフにも関わらず半泣きで嘆く俺に、滝沢くんは優しく微笑んだんだ。
滝｢安心しろ。お前が辞めたくない内は辞めさせねーよ。たとえ死んだって、お前が望むなら籍を置いて貰える様に頼む。｣
深｢何か、凄い極端っすね。｣
滝｢極端でいいんだよ。だから、自分で自分の限界を決めつけんな。体が動かなくなったって根性で食らいつけ。｣
格好良い滝沢くんらしい、男気溢れる意見。
でも、俺はそんな強さとはかけ離れてて、すぐ弱気になる意気地無し。
デビュー出来ないんじゃないか、その前に死んじゃうんじゃないかって、どうしても考えちゃうんですよと情けない声で零せば…
お前がそんなんでどうすんだ、メンバーを守れんのかと喝が飛んだ。
けど、次の瞬間には朗らかな顔に戻って、命は1つしかないから大事にしろよ、俺も出来る事は何だってするとﾜｼｬﾜｼｬと頭を撫でられる。
正直、滝沢くんなら社長に直訴したり本当に無茶な事でも何でもしそうだから、後で周りから何か言われねーかなとか心配してたら…
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、"まぁ見とけ､良い考えがあるんだ"なんてニヤリ顔。
いつも滝沢くんは俺らの想像を凌駕してくるし、また俺なんかが考えもしない事を思い付いたんだろうなって思って…
迚も斯くても、その日はお開きになった。
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月18日 1時) (
レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
まや - このお話見ていてとても胸がキュッとなってすごくいい作品だと思いました、！！続きがとても気になるので、ゆっくりでも更新待ってます、！！ (2023年4月6日 2時) (レス) @page41 id: 3b11924b07 (このIDを非表示/違反報告)
餡子(プロフ) - とても面白いです！続きが気になります！これからも無理せず頑張ってください！ (2022年8月9日 21時) (レス) @page41 id: e06a8e0f67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和音
| 作成日時：2022年4月23日 19時
