92話 ページ43
-深澤side-
事故当時は、2人とも意識があったらしい。
でも、打ち所が悪かったみたいで、救急車の中で容体が急変。
蘇生措置が施されたものの、既に手遅れだった。
病院に着いて程なくして、静かに息を引き取ったそうだ。
深｢っ……母さん、柊平…｣
目を閉じれば、今も瞼に浮かぶ。
母の朗らかな笑顔と、弟の無邪気な姿が。
そんな中、ふと後ろから物音が聞こえた気がして振り向くと、ﾍﾟﾀﾝと床に座り込んだ亮平。
涙石病を持つ俺を気遣ってか必死に堪えてたけど、耐え切れなかった涙がﾎﾟﾛﾎﾟﾛと頬を滑り、灰色の床を色濃く変えるから…
そっと近寄って、その背中を摩った。
阿｢ひｯ…っ…ｸﾞｽｯ……何でっ…何でよｯ…！｣
俺だって、決して悲しくない訳じゃ無い。
楽屋で事故の事を知ったあの時、流した涙も本物だ。
…ただ、衝撃的過ぎる現実を目の前にして上手く受け止めきれず、亮平の泣き声を聴きながら呆然と思い出していた。
母さんと亮平に拾われた、あの日の事を。
本当の家族として過ごした、これまでを。
血の繋がらない俺を、亮平や柊平と同じだけの大きな愛で包んでくれた母さん。
俺が心から笑うこと。
俺が幸せになること。
俺が元気でいること。
それだけを、ずっと願い続けてくれた母さん。
そして、こんな厄介な病気を抱えて頼りない俺を、本当の兄貴として慕ってくれた柊平。
反抗期で亮平には冷たく当たる癖に、俺には相変わらずの甘えっ子で…
辰兄ぃ辰兄ぃって小さい頃から同じ呼び方で、後ろをついて回る可愛い弟。
大切な2人を、いっぺんに失ってしまったのに。
目の前に青白い顔で横たわってるのは、間違いなく自分の家族である筈なのに。
実感が湧かない。
やっぱり、涙は出なかった。
阿｢はぁｯ…ｸﾞｽｯ……っ…く…ﾋｯｸ…｣
深｢亮平、苦しくなっちゃうよ。｣
阿｢ﾋｯｸ…っ…だって…ｯ……ｸﾞｽｯ…｣
深｢…一回出よっか。ね、亮平。｣
泣けない俺とは反対に、しゃくり上げすぎて過呼吸になりそうな亮平にそう伝えて…
肩を抱いて立ち上がらせると、一旦この重くて息苦しい霊安室を後にした。
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月18日 1時) (
レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
まや - このお話見ていてとても胸がキュッとなってすごくいい作品だと思いました、！！続きがとても気になるので、ゆっくりでも更新待ってます、！！ (2023年4月6日 2時) (レス) @page41 id: 3b11924b07 (このIDを非表示/違反報告)
餡子(プロフ) - とても面白いです！続きが気になります！これからも無理せず頑張ってください！ (2022年8月9日 21時) (レス) @page41 id: e06a8e0f67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和音
| 作成日時：2022年4月23日 19時
