60話 ページ11
-阿部side-
深｢んもー…おれ、もうへーき……っ…ｺﾞﾎｯｹﾞﾎｯ…｣
阿｢…どの口が言ってんの。｣
医｢そうだよ、大人しく検査行こう。｣
救急車の中では酸素を流してたお陰で呼吸が楽になってて意識も比較的ハッキリしてたからか、碧先生の元に到着するなり駄々を捏ね始める辰哉。
多分、少し前の定期検診で肺の鉱石化が見つかってから、検査って物に神経過敏になってるんだと思うけど…
今はそんな場合じゃないから、勘弁して欲しい。
呼吸困難になっておいて"風邪だもん"って咳込みながら泣きべそをかくものの、結局は抵抗虚しくストレッチャーで強制連行されて行った。
阿｢もう…こっちは肝が冷えたんだってば。｣
あの時の姿を思い出すと、体が震える。
もしかしたら今ここで死んじゃうんじゃないか、って頭が真っ白になったのに土壇場で冷静な判断が出来た自分が、少し怖くもあり…
それでいて無意識にでも体が動いてくれた事に感謝して、気を張りっぱなしだった全身の力を抜いた。
それから暫く。
待合室で知らせを待ってると、辰哉の検査が終わったらしく担当医の碧先生が手招きをする。
その場所は家族説明室と書かれていて、中に入るなり椅子に座るよう促され、俺が頷いて素直に腰を下ろせば…
封筒から取り出したレントゲン写真を後ろのシャウカステンに貼り付けた先生が、困った様な顔で笑った。
医｢辰哉くん、肺炎だったよ。それも、重度の。｣
阿｢えっ…｣
やっぱり、ただの風邪じゃなかったじゃん。
救急車を呼んで正解だった。
そうやって、一旦は安堵したけど…
基礎疾患がある辰哉は人一倍合併症のリスクが高くて、一週間の入院が必要になるみたい。
涙石性心身硬化症…あの病気が今回の肺炎の原因かは定かでは無いけれど、着実に辰哉の肺機能は蝕まれていく。
そんな事実という名の恐怖が、当事者でもない俺をも飲み込む気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 610人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月18日 1時) (
レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
まや - このお話見ていてとても胸がキュッとなってすごくいい作品だと思いました、！！続きがとても気になるので、ゆっくりでも更新待ってます、！！ (2023年4月6日 2時) (レス) @page41 id: 3b11924b07 (このIDを非表示/違反報告)
餡子(プロフ) - とても面白いです！続きが気になります！これからも無理せず頑張ってください！ (2022年8月9日 21時) (レス) @page41 id: e06a8e0f67 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和音
| 作成日時：2022年4月23日 19時
