止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ8)

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53話ページ8

-渡辺side-

渡｢っ…ぅ…ｯ…ﾊｧｯ…っ…ｹﾎ…｣

岩｢ほら、我慢しないで吐いちゃえ。｣

会議室から程近いトイレの、一番手前の個室。

便器の前にしゃがみ込む俺が倒れない様に、後ろから支えてくれる照。

軽く俺の背中を叩いて、"我慢するな"って言うけど…

俺は我慢してるつもりなんてないんだよ。

そりゃ、さっきまでは今にも吐きそうだった。

でも、何も入ってない胃から何かを出せる訳もなく、空嘔吐きを繰り返すだけで吐けないんだ。

照はその事に気付くなり戸惑いながらも、少しでも落ち着く様に背中を下から上に撫でてくれる。

それでも、気持ち悪いのに出せない感覚が数分と続いて…

体力ばっかり奪われて、すっかりﾍﾄﾍﾄで気分も最悪。

するとそこへ、背後から聞き慣れた声がした。

岩｢おぉ、康二と目黒。ラウも。どうした？｣

向｢しょっぴーが心配やって言うたら、遅いから様子見てきなって。｣

目｢今会議室に滝沢くんが来てて、ふっかさん達は事情を説明してるから。｣

ラ｢あと、これ…お水いるかなって思って…｣

岩｢そっか…ありがとな、3人共。｣

すぐ後ろで4人が話す声が聞こえる。

けど、俺は喋るどころか顔も上げられず、振り向くことすら出来ない。

アイツらの兄ちゃんなら、せめて嘘でも大丈夫だって安心させてやらなきゃいけないのに。

見栄より何より現実の方がずっと重たくて、それに半ば押し潰される様にまた嘔吐いた。

岩｢翔太、一回水飲んでみよう。｣

不意に話し声が止んで肩を軽く叩かれたかと思えば、唇にあてがわれる開栓されたペットボトルの飲み口。

少し飲めば吐けるかもしれない。

なんて、ゆっくり傾けてくれるから、口を僅かに開けたものの…

物事、そう上手くは行ってくれないらしい。