止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ32)

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77話ページ32

-深澤side-

宮｢…本人の意思も確認せず、他の何より大事な事を決めていいんでしょうか。｣

滝｢何？｣

心の奥底がよく窺えない複雑な感情を下を向く事で隠した舘さんが、必死に…

でも、あくまで冷静に…滝沢くんに伝えようとする。

口を閉ざしたままの俺らが、酷くちっぽけに見えるくらい。

それは間違いなく、翔太を思うが故の行動だった。

普段寡黙な舘さんが、今まで見た事も無い表情で並べ立てた言葉達は…

どれも全てが、胸に突き刺さった。

宮｢私は翔太が渋る手術の同意書に強引にサインを貰って、無理に手術を受けさせました。翔太を死なせたくなかったから。｣

滝｢あぁ、現にそれのお陰で渡辺は助かったんだろ？｣

宮｢でも、手術が終わった後…病室で声を出せずに涙を流す彼の姿を見た時、それを後悔したんです。｣

もしかしたら、これは当事者でない自分の独り善がりだったのかもしれない。

翔太を意地でも説得すれば良かったのかもしれない。

翔太自身が納得した上でやったなら、少しは変わったのかもしれない。

全てが過ぎてしまった現在に、今更そんな事を思っても仕方ないのに。

と、更に俯いて話し続ける舘さん。

けど、不意に顔を上げたかと思ったら…

一切視線を逸らすことなく、滝沢くんの目を見つめた。

宮｢自分の行動を棚に上げて酷いとは思います。でも、だからこそ一番大事な事は本人に確認をしてほしいんです。｣

そう言って、深くお辞儀するから…

今まで呆然と見ているだけだった俺も他のメンバーも、慌てて一緒に頭を下げる。

そしたら少しの間を置き、顔を上げろと聞こえた声。

その通りに恐る恐る顔を上げて、体勢を元に戻すと…

その声の主である滝沢くんは、溜め息を吐きつつも頷いてくれた。

だから、メンバー全員で感謝を伝えれば…

この後も仕事だろう多忙でいいな？と、冗談半分に追い出される形で、副社長室を後にした。