止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ26)

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71話ページ26

-宮舘side-

母｢ｯ……翔太っ…｣

父｢っ…｣

手術室の傍にある家族待合室の中。

部屋の隅に置かれた硬い座面のソファに、翔太のご両親と向かい合って座る。

お父さんもお母さんも俯いてしまっていて、流れる空気は物凄く重い。

けれど、そう言う俺もさっきの光景が頭から離れてくれなくて、一切喋り出せずにいた。

思えば、ここ何年かは年末年始も忙しくて、顔を合わせるのは数年前に翔太と一緒に地元に帰って以来なのに…

久々に会うのがこれなんて、何と言ったらいいのか分からない。

でも、その気持ちが伝わってしまったのか否かは定かではないが、長く続いた沈黙の後…

徐に顔を上げた翔太のお母さんは少し無理をした様な笑顔を浮かべて口を開き、それに釣られるようにお父さんもこちらを向いた。

母｢涼太くん、いつも迷惑かけてごめんなさいね。あの子、昔から強がりでしょう？限界を測る物差しが大きすぎるのよ。まだ行けるまだ頑張れるって、それで苦しい思いをするのは自分なのにね。｣

父｢体が弱かった子供の頃も今も、涼太くんはずっと傍で支えてくれたな。本当にありがとう。これからも、翔太を頼んでいいかい？｣

宮｢っ…はい…｣

その柔らかな微笑みの目元には、今にも溢れそうな涙が見える。

2人共、きつく握り締めた手を小刻みに震わせて、息子を失うかも知れない恐怖と戦っているようだった。

それでも、話を止める事なく俺に沢山の事を聞いてくれたのは…

親が知らない息子の姿を知り、現在よりも未来を見て、辛い事よりも楽しい事を想像する。

その為なのだと、他の誰よりも翔太の回復を祈るご両親の心根が、甚く心に染みた。