止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ25)

今日:5 hit、昨日:38 hit、合計:302,694 hit

70話ページ25

-宮舘side-

渡｢ﾊｯ…ﾋｭ…ﾊｧｯ…っ……ﾋｭｰ…ｹﾎ…ｯ…｣

母｢ｯ…翔太っ…｣

宮｢っ…！｣

翔太のご両親は言葉を失って息を呑み、俺も呆然とその場に立ち尽くす。

移動式ベッドの上でｸﾞｯﾀﾘとして額にｼﾞﾝﾜﾘと汗を浮かべ、横向きの体勢で酸素マスクをした幼馴染の姿。

蒼白な顔色で必死に繰り返す息は、荒くて規則性がなく…

それでも吸気を上手く取り込めないのか、唇や爪がチアノーゼを起こして濃い青紫色に変色している。

父｢っ…まさか、ここまでとは…｣

無理矢理に絞り出す様な、翔太のお父さんの声。

無理もない。

こんな状態で手術を拒否するなんて無茶にも程があるし、命知らずなのかとすら思ってしまう。

でも、それはきっと…

グループのメインボーカルとしての、翔太の強い意志だったんだろう。

喉の炎症や浮腫が治るまでの間だって…

そんな短い期間だって…

声だけは決して失くしたくないという、そんな揺るぎない気持ちの表れ。

父｢翔太、何で手術を渋ったんだろうな。｣

母｢…命の方が、大切なのにね。｣

宮｢…っ、｣

正直、大事な喉に穴を開けたくないって思うその気持ちは、分からないでもない。

俺がもし翔太の立場なら、同じ様に嫌がったかもしれないから。

だから勝手に判断して勝手に決めた事を反省しつつ、心の中で謝って…

程なく看護師さんや先生と共に手術室の中へ消えていく翔太を見送ると、それから直ぐに"使用中"の赤いランプが点った。

ただ、音も立てずに静かに閉まったその扉が、何だかやけに寂しく感じて…

それと同じくらい、酷く不安な気持ちに押し潰されそうだった。