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65話 ページ20

-渡辺side-





渡「ヒュー…っ…だれ、かっ……ハァッハァ…ッ…ケホッ…ヒュ…」





まずい。


まずい。



頭の中に緊急事態の警報が鳴り響く。




どうしよう。


もし、ずっとこのままだったら。



どうしよう。


更に息が出来なくなったら。




…その答えは、声に出さなくても自ずと分かる。



脳裏に浮かぶ、震え上がる程の恐怖。




もし、このままなら…確実に死ぬ。



誰にも気づかれないまま、ここで人生終了。




とは言え、そんなの絶対に嫌だ。


死にたくなんてない。



だから、ベッドの上で踠きながらもどうにか助けを呼ぼうと、手近にあった点滴スタンドを倒すと…


ガッシャーンッ!なんて物凄い衝撃音を立てた上、左腕から外筒が引っこ抜けた。





渡「ハァッ…ヒュー…っ…いッ……ケホ…ッ…」





管が外れた腕からダラダラと血が流れ出す感覚を感じても、痛みより息が出来ない事の方が何百倍も辛くて…


右手でシーツを握り締めていれば、程なくしてパタパタと近付いてくる足音。





看「渡辺さーん?どうされましたー?」





さっきの音で気付いてくれたのか、慌てて駆け込んで来たのは夜勤の看護師さん。




閉められてたカーテンを開けて俺の様子を見るなり、声を掛けてくれて…


安堵しつつ、意識がある事を必死に頷く事で伝えると、PHSで先生に連絡してくれた。





看「大丈夫ですよ、ゆっくり呼吸しましょうねー?」



渡「ハッ…ハァッ……ヒュ…っ…んッ……コホ…ヒュー…」





でも、看護師さんに背中を摩られながら先生の到着を待つ間。




ずっと息苦しいせいで酸欠を起こして頭が痛くてボーッとするのに、苦しくて堪らなくて嫌に落ちきらない意識に…


いっそ気を失わせてくれなんて、何度も何度も考えていた。

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作者名:和音 | 作成日時:2020年11月24日 18時

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