止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ19)

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64話ページ19

-渡辺side-

渡｢はぁ…｣

熱があって鉛のように重い体。

相も変わらず苦しい呼吸。

けど、点滴が効いて喉の痛みも胃の痛みも吐き気もかなりマシ。

だから、考える力は残っていて…

ｸﾞﾙｸﾞﾙと脳内に付き纏うのは、これからの入院生活と仕事に穴を空ける事に対しての不安。

でも、今は体を休めるのに専念しないといけないって、それが俺のやるべき事なんだって、ちゃんと分かってるから。

だって、自分の体が発するSOSを無視し続けた結果がこれだもん。

そんな訳で、余計なことは考えない事にして、口元から少しズレた酸素マスクの位置を直して息を吐いた。

…それなのに、何故かｻﾞﾜｻﾞﾜする心。

拭えない違和感。

その正体は、きっと俗に言う嫌な予感ってやつだろう。

渡｢っ…｣

外の雨は季節外れの土砂降りで、その不確定な予感に確信を持たせるよう。

そして、そんな当たって欲しくない予感ほど当たってしまうのが、この世の摂理。

それが起きたのは数時間後、あまりに急な出来事だった。

消灯時間の少し前…

看護師さんに熱を測られて、点滴を新しい物に換えてもらった後。

天井のスピーカーからアナウンスが聞こえて明かりが消え、ｳﾄｳﾄと夢の世界へ向かって暫くが経った時。

渡｢っん……はぁ…っ…ふぅ…｣

最初は些細な事。

何だか呼吸が浅いなって朧気に自覚して、でも眠くて重たい瞼は下りていく。

しかし、徐々にその眠気も覚めていったんだ。

思い切り首を絞め上げられる様な…

深い海の底で溺れてしまった様な…

とてつもない息苦しさに襲われたから。

渡｢ﾊｧｯ…ﾋｭ…っ…やｯ……ｹﾎｯ…ﾋｭｰ…ｯ…｣

喉にある異物感が、気道を塞いでいる気がする。

絶対に外すなと看護師さんに念押しされた酸素マスクも、意味を成さない。

喉の奥からは、またﾋｭｰっと変な音が聞こえる。

まともに呼吸ができなくて、あまりの苦しさにナースコールを押そうとするけど…

少し動かすだけで首周りが何故か熱を持って激しく痛み、寝返りを打つ事すら叶わなかった。