止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ17)

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62話ページ17

-目黒side-

ゆらゆら。

ふらふら。

不安気に揺れるしょっぴーの瞳。

ベッドに横になったまま、口元に付けられた透明なマスクの中で溜め息を吐く。

…当たり前だよね。

大事な大事な滝沢歌舞伎の稽古期間を潰して入院なんて…

もしそれが自分の立場ならって想像したら、とても直ぐには"ハイハイ休みます"って言えない。

でも、休まなきゃならないんだよ。

しょっぴーは無理をし過ぎちゃったから。

だからせめて笑って欲しくて、皆して必死に場を明るくしたんだ。

深｢歌舞伎の稽古だって、翔太なら直ぐに追いつけるよ。｣

阿｢羨ましいくらい振り覚え早いしね！｣

岩｢俺らも万全にサポートするからな。｣

向｢俺が教えたるでっ！｣

目｢いや、康二の場合は追い抜かれると思うよ。｣

佐｢わぁー！めめ辛辣だねぇ！｣

ラ｢佐久間くん、ここ病院だからシーね。｣

宮｢17歳に注意される28歳…恥ずかしいよ、佐久間。｣

そんな風に、出来るだけいつも通り。

普段通り。

そしたら、しょっぴーも気付けば自然に表情が明るくなってて、康二と俺のやり取りに言葉を被せて笑ってる。

"康二に教わる程落ちぶれちゃいないよ"なんて、ちょっと酷いけどね。

暫く話をして、楽しい時間はあっという間。

面会終了が近付き、俺らは帰らなきゃいけなくて、少しばかり名残惜しい。

荷物を纏めてカバンを背負って、また来るからねってラウがしょっぴーにハグして。

一人の夜は寂しいだろうし、元気付ける笑顔と一緒に。

でも、この時は気付けなかった。

辺り一面を覆い尽くす曇り空が、すぐそこまで迫っていたという事に。

まだ、試練は沢山残されている。

…いいや寧ろ、これからが本番なのだという辛すぎる現実を。